地震・津波により、東北地方太平洋沿岸一帯の港湾や沿岸海域では、地震による地盤沈下や津波によって流出したコンテナ、堆積物の移動等により、海岸線や水深等、海図に記載している情報が変化しているため、これらを修正する必要があります。
このため、海上保安庁では、被災港湾において、海図記載の水深の基準となる基本水準面(最低水面)を決定するとともに、海図補正のための水路測量を実施し、海図を改訂する作業を進めています。
■基本水準面の決定 |
潮汐観測を行い、岸壁などの陸上に設置した基本水準標を基準に基本水準面を決定しています。 |
■8月4日に提供した情報図(仙台塩釡港塩釡区) |
港湾の震災前後における水深変化を航海者等に早期に周知するため、海図改版等に先行して、水路測量の結果(水深情報)を記載した「情報図*」を提供しました。 |
■9月9日に改版した海図(仙台塩釡港塩釡区) |
被災地における復興計画の立案に際しては、津波シミュレーション(津波被害の予測)に基づく津波ハザードマップ等を整備する必要がありますが、そのためには、まず、津波シミュレーションに使用する海底地形データを早期に入手することが不可欠となります。
海上保安庁では、海岸付近等、浅瀬でも迅速かつ広範囲に水路測量を実施することができる航空レーザー測深機を保有しているため、同測深機を搭載することができる航空機により、平成23年6月11日から21日にかけて仙台湾及び宮古湾(国土交通省水管理・国土保全局と連携)を、同年11月13日から18日にかけて松島湾をそれぞれ測量しました。
取得した海底地形データや水深データは、水管理・国土保全局が実施した潮位観測等のデータと併せて、津波シミュレーションや海岸の浸食対策等のために使用されるとともに、海図の改版にも利用されています。
▲宮古湾の海底地形 | ▲航空レーザー測量 |
▲名取川河口付近の海底地形 |
海上保安試験研究センターでは、津波により水没した業務用パソコンや外部記憶媒体のデータ復旧作業を実施しました。同センターには、震災から約3週間後の4月上旬に、被災した部署のパソコン内蔵ハードディスクやUSBメモリが持ち込まれましたが、電子データの復旧の可能性は時間の経過とともに低くなるため、当初、復旧は困難であろうと思われました。しかし、これまでの沈没船等の海没した航海計器からの航跡データ抽出作業のノウハウを活かして、精製水や超音波洗浄機による洗浄や真空乾燥機を使用した乾燥作業等を根気強く行った結果、見事、9台の電子データの復旧に成功しました。
海上保安庁では、海底に基準点を設置し、測量船により海底地殻変動を観測しています。 宮城県沖の地震発生前の観測では、年間5〜6cm程度、西向きに移動していましたが、地震後の観測では、震源のほぼ真上にある基準点で、東南東に約24m移動、約3m隆起したことが分かりました。 この観測結果は、東北地方太平洋沖地震に伴う大規模な地殻変動を海底で捉えたものであり、今回の地震を起こした断層の位置や大きさ、ずれの量などを知るための重要な手がかりになりました。 |
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■海底の動き | ■プレート境界地震の発生メカニズム |
日本列島は、海洋プレートと大陸プレートの境界部に位置し、太平洋側では、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいます。このプレートの沈み込みとこれに伴う陸地の圧縮により、地震が多く発生しています。特に、東海・東南海・南海地震等の海溝型地震や首都直下地震といった巨大地震は、百年から数百年の間隔で発生してきていると言われており、過去の発生時期を踏まえると、近い将来に発生する可能性が高いと指摘されています。
今般の「東北地方太平洋沖地震」という想定を超えた巨大地震の発生を踏まえ、今後、想定される巨大地震については、地震規模や被害想定等の見直しが必要とされています。巨大地震発生の切迫性が高まっていると認識し、巨大地震による災害への備えを行うことが一層重要となっています。
■将来発生する可能性の高い巨大地震 |