海上保安レポート 2012

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 東日本大震災


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 交通の安全を守る

8 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

8 海をつなぐ > CHAPTER 1 関係国との連携・協力
8 海をつなぐ
CHAPTER 1 関係国との連携・協力

各国が共通して直面している問題に対して、地域レベルで連携・協力して対処していくことは大変重要です。そこで、海上保安庁では、各国関係機関との多国間・二国間での連携・協力を推進しています。

多国間連携
1 北太平洋海上保安フォーラム

海上保安庁は、日本、カナダ、中国、韓国、ロシア、米国の6か国の海上保安機関の代表が一堂に会し、各国間の具体的な連携・協力について協議を行う北太平洋海上保安フォーラムに参加しています。同フォーラムは、長官級会合である北太平洋海上保安フォーラムサミットと実務者による北太平洋海上保安フォーラム専門家会合で構成されており、実践的な多目的訓練も実施されています。

平成23年9月には、日本を議長国として横浜において第12回北太平洋海上保安フォーラムサミットが開催されました。

北太平洋海上保安フォーラムサミットを開催 〜6年ぶりに議長国を務める〜
北太平洋海上保安フォーラム
▲北太平洋海上保安フォーラム

平成23年9月12日から15日、横浜において第12回北太平洋海上保安フォーラムサミットが開催されました。同サミットは海上保安庁の呼びかけで、平成12年第1回会合を開催、以後毎年各国持ち回りで開催されています。日本での開催は平成17年神戸での第7回サミット以来であり、6年ぶりに議長国を務めました。

また、今回のサミットでは、この北太平洋海上保安フォーラムをモデルに平成19年に設立された、北大西洋地域における海上保安機関の会合である北大西洋海上保安フォーラムとの相互理解を深めるため、平成23年の同フォーラム議長国であるフランスがオブザーバーとして参加しました。

会議においては、我が国から東日本大震災への対応等を各国に紹介し、大規模災害に向けた連携強化のためのワーキンググループを新たに設置することに合意したほか、海上セキュリティの脅威への対応のためのガイドラインを策定するとともに、共同での実践的活動である多国間多目的訓練のテーマを「大規模海難対応」と決定し、これらを盛り込んだ6か国共同宣言を採択しました。

本会合の枠組みにおける連携・協力は、北太平洋地域の海洋の秩序を確保する上で非常に重要であることから、海上保安庁では今後とも積極的に参画していきます。

2 アジア海上保安機関長官級会合
アジア海上保安機関長官級会合
▲アジア海上保安機関長官級会合

アジア海上保安機関長官級会合は、海賊海上武装強盗事案の多発、厳しいテロ情勢及び国境を越える犯罪の増加等を踏まえ、アジアの海上保安機関の長官級が一堂に会し、海上保安行政に関する地域的な連携強化を図ることを目的として、海上保安庁の提唱により、平成16年から開催されているものです。平成23年10月には、ベトナム・ハノイにおいて第7回長官級会合が開催されました。会合においては、キャパシティービルディング(海上保安能力向上)に係る各国の目標や取組み手法をアクション・プログラムとして取りまとめたほか、大規模災害への対応や海賊・海上武装強盗等に係る海上セキュリティー対策等について議論されるとともに、これまでの同会合の成果を基に、海上保安の各分野において、各国海上保安機関が一体となって取り組み、アジア地域における海上安全、海上セキュリティー、海洋環境保全等に寄与する具体的な連携の成果を実現すべく、継続して取り組んでいくことで合意しました。

二国間連携

二国間で共通する問題については、両国でその問題解決に向けて連携・協力していくことが重要です。海上保安庁では、多国間のみならず、二国間での連携・協力関係の構築にも積極的に取り組んでいます。


1 日韓海上保安当局間長官級協議
日韓海上保安当局間長官級協議
▲日韓海上保安当局間長官級協議

海上保安庁と韓国海洋警察庁は、海域を接する両国間の海上における秩序維持を目的として、共通する幅広い分野で相互協力を推進しています。その一環として、平成11年から毎年1回、日韓海上保安当局間長官級協議を開催するとともに、現場レベルを含む各レベルでの会合や連携訓練を実施しています。

平成23年7月には、韓国において第13回協議が行われました。同年に両国がそれぞれ海賊を逮捕・送致する事案が発生したことを踏まえ、海賊事案に係る連絡窓口の設定、情報交換・人的交流等の更なる協力を推進することに合意しました。また、同年11月には第七管区海上保安本部と南海地方海洋警察庁の間及び第八管区海上保安本部と韓国東海地方海洋警察庁との間で合同捜索救助訓練を実施し、両機関の連携強化を図りました。

2 日印海上保安機関長官級会合
日印海上保安当局間長官級会合
▲日印海上保安当局間長官級会合

海上保安庁とインド沿岸警備隊は、平成12年以降、定期的に長官級会合や連携訓練を実施しており、平成24年1月には、インドにおいて長官級会合と連携訓練を実施しました。長官級会合(於:ニューデリー)では、インド近海におけるソマリア海賊対策として、日本関係船舶の安全確保を図るべく、救助要請窓口を明確化するとともに、当庁とインド沿岸警備隊双方の救難調整本部間において、海賊事案を想定した訓練を実施し、協力の充実を図るなど日印両国間の連携強化の具体策について合意しました。また、長官級会合の機会をとらえた連携訓練(於:チェンナイ)では、海上保安庁から巡視船「せっつ」を派遣して、インド沿岸警備隊巡視船艇及び航空機と合同で油防除、容疑船捕捉、捜索救助、及び海賊対策訓練を実施し、両機関の連携強化を図りました。

迅速・効果的な捜索救助のために 〜SAR協定〜
日韓合同捜索救助訓練
▲日韓合同捜索救助訓練

海上における捜索救助を迅速かつ効果的に行うためには、沿岸国間で捜索救助活動の調整等の協力を行うことが重要であることから、SAR条約(「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」、SAR:Search And Rescue(捜索救助))においては、二国間のSAR協定の締結を推奨しています。我が国では昭和60年にSAR条約に加盟後、現在までに米国、韓国及びロシアと二国間SAR協定を締結しています。また、中国との間でも、捜索救助に関する適切な協力が行われているところであり、SAR協定締結に向けた交渉も進められているところです。