海上保安レポート 2012

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 東日本大震災


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 領海等を守る

3 生命を救う

4 青い海を守る

5 災害に備える

6 海を知る

7 交通の安全を守る

8 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

4 青い海を守る > CHAPTER 1 海洋環境保全対策
4 青い海を守る
CHAPTER 1 海洋環境保全対策

海洋汚染を防止し、海洋環境を保全していくためには、国民の皆様の意識を高めていただくことが不可欠です。このため、海上保安庁では、「未来に残そう青い海」をスローガンに、海洋環境保全に関する指導・啓発活動に取り組んでいます。また、海洋汚染発生状況の把握、汚染源の特定等を行い、新たな海洋汚染の防止を図っていきます。

平成23年の現況
1 海洋汚染の状況

海上保安庁では、巡視船艇・航空機等による監視や「118番」通報、測量船による調査等をもとに、海洋汚染の発生状況等の把握に努めています。平成23年は、油、廃棄物、有害液体物質、赤潮青潮等による海洋汚染の発生を391件確認しました(前年比86件減少)。種類別に見ると、依然として油の排出が256件と最も多く、次いで、廃棄物の投棄が81件となっています。油の排出の主な原因としては、取扱不注意等の人為的ミスによるものが多くなっています。


◆ 海洋汚染の現状(統計資料)

http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/tokei/index.htm

◆ 海洋汚染調査・放射能調査の報告

http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/OSEN/oceanenv.html


■排出原因別に見た油による汚染 ■海洋汚染発生確認件数の推移
排出原因別に見た油による汚染 海洋汚染発生確認件数の推移
 
■排出原因別に見た油以外のものによる汚染
排出原因別に見た油以外のものによる汚染
2 海洋環境保全活動
■平成23年の「海洋環境保全推進月間」実施結果
平成23年の「海洋環境保全推進月間」実施結果

海洋環境保全に対する国民の皆様の意識を高めていただくため、海上保安庁では、全国各地で海洋環境保全に関する指導・啓発活動を実施しています。特に、6月は毎年、「海洋環境保全推進月間」として、「未来に残そう青い海」をスローガンに掲げ、海事・漁業関係者等を対象とした海洋環境保全講習会や訪船指導、一般市民を対象とした海洋環境保全教室の開催等を実施しています。

海洋環境保全推進月間のPR 海洋環境保全講習会
▲海洋環境保全推進月間のPR ▲海洋環境保全講習会
3 海洋環境調査活動

海上保安庁では、日本周辺海域における海洋環境の状況を正確に把握するため、海洋汚染調査や放射能調査を実施しています。特に、平成5年にロシアによる日本海・オホーツク海への放射性廃棄物投棄の事実が判明したことから、平成6年から毎年、日本海等において放射能調査を実施し、放射能の影響の経年的な監視を行っています。

4 全国海の再生プロジェクト

東京湾のように背後に大都市を抱えた閉鎖性の高い海域は、生活排水等が大量に流れ込むうえ、外海との海水の交換が起こりにくく、赤潮の発生等、水質汚濁が慢性化しています。こうした海域では、水質環境の把握及び汚濁メカニズムの解明のため、国、自治体、大学・研究機関、民間企業等の幅広い機関が参加して「全国海の再生プロジェクト」が全国各地で実施されています。海上保安庁では、環境モニタリング等の各種活動を関係機関と連携し推進していきます。


■海の再生プロジェクトの概念図
海の再生プロジェクトの概念図
今後の取組み
1 海洋環境保全のための指導・啓発活動の推進

海洋汚染の多くは人為的要因により発生しています。このため海上保安庁では、海事・漁業関係者等に対する海洋環境保全講習会や訪船指導等により法令の遵守を呼びかけるとともに、海上保安協力員等のボランティアや地方公共団体等と連携し、国民の皆様に対する海洋環境保全の指導・啓発活動を推進していきます。


2 海洋環境の調査

海上保安庁では、海洋環境の現状を正確に把握するため、定期的に測量船等により海水及び海底堆積物を採取し、それぞれに含まれる汚染物質及び放射性物質の分析を行っています。今後も引き続き、東京湾等各主要湾における油分、PCB、重金属等の海洋汚染調査や日本周辺海域及び米国原子力艦の寄港地である、横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)において、定期的に放射能調査を実施していきます。


3 新たな制度への対応

「1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する1978年の議定附属書I」の改正に伴い、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」の一部が改正され、平成24年4月1日に施行されました。同改正により、船舶間で貨物油を積み替える場合には海上保安庁へ事前通報を行うこととなり、また、油の排出のおそれがある場合には、海上保安庁長官から船長に対し措置命令を行う制度が設けられました。この制度の適正な運用を図ることにより、船舶間における貨物油積み替えに起因する油の排出の防止に努めていきます。

未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール

海上保安庁では、次世代を担う子どもたちを主な対象とした海洋環境教室などを通じ、幼い頃から環境保全の心を養ってもらえるよう、啓発活動に取り組んでいます。

これら啓発活動の一環として、毎年、全国の小・中学生を対象に「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を実施しており、平成23年は、全国から32,850点の作品が寄せられました。

それぞれの部で海上保安庁長官賞に選ばれた作品はこの3点です。

小学生低学年の部 坂 朝陽さんの作品 小学生高学年の部 矢嶋 花帆さんの作品
▲小学生低学年の部 坂 朝陽さんの作品 ▲小学生高学年の部 矢嶋 花帆さんの作品
中学生の部 加藤 美紀さんの作品  
▲中学生の部 加藤 美紀さんの作品