11月1日午前10時5分頃、第二管区海上保安本部運用司令センターの電話が鳴った。
〈串本海上保安署(第五管区海上保安本部)〉
「今、那智勝浦のマグロ延縄漁船の船主から連絡があって、宮城県金華山の東方約810マイルで乗組員が体調不良のため救助を求めています。」
〈第二管区海上保安本部運用司令センター〉
「了解!」
〈当直班長〉
「遠いなぁ…、洋上救急か?…医師の手配は大丈夫かなぁ…。」
これからしなければならないことが頭の中を駆け巡った。
その予感は的中した。
船主から洋上救急往診の要請があり、出動できる医師を探し始め、多方面からの調整の末、ようやく東京の病院の医師等が出動してもらえることとなった。
その後、巡視船「ざおう」、巡視船「えりも」と航空機の連携による救助活動の結果、3日午後3時過ぎ、無事患者を医療機関に引き渡し、第二管区海上保安本部運用司令センターに安堵の時間が訪れた。
それから約2週間が経ち前回洋上救急に対応した同じ当直が業務にあたっていた19日午後5時30分頃、第二管区海上保安本部運用司令センターの電話が再び鳴った。
〈気仙沼海上保安署(第二管区海上保安本部)〉
「近海マグロ延縄漁船の乗組員が肺炎の疑いがあり、洋上救急往診を要請しています。」
〈第二管区海上保安本部運用司令センター〉
「了解!」
〈運用官〉
「気仙沼保安署からの連絡で、近海マグロ…、場所は金華山の沖、1,426マイルです。」
〈班長(心の声)〉
「えっ!1,426マイル!この前、遠距離洋上救急に対応したばかりなのに、立て続けにか。でも急がなくては!」
その後、巡視船「そうや」、航空機の連携による救助活動の結果、6日後の25日、患者を無事医療機関に引き渡した。
平成16年の洋上救急対応件数は10件であったが、その中でも医師の調整等の大変な遠距離の事案が立て続けに同じ当直にあたるとは…。
このように、洋上救急制度発祥の地である第二管区海上保安本部は、遠距離での洋上救急事案が多く、出発から医療機関への引渡しまで医師が洋上救急に従事する時間が長いため医師の派遣調整に大変苦労しているところです。しかし、医師の確保は喫緊の課題であることから、担当職員が協力病院の拡充に向けて東北中を飛び回った結果、二つの大規模病院の協力を得られることとなりました。
今後は医師の派遣等の調整が容易になり、そして少しでも救助が早くなることが期待できます。
▲洋上救急の様子