海上保安庁では、法令違反の取締り、海洋環境の科学的調査等に加え、国民の皆様への指導・啓発活動等を実施するなど、海洋環境を保全するための総合的な取組みを実施しています。
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3 青い海を守る
CHAPTER2 海洋環境保全対策
海上保安庁では、法令違反の取締り、海洋環境の科学的調査等に加え、国民の皆様への指導・啓発活動等を実施するなど、海洋環境を保全するための総合的な取組みを実施しています。 1 海上環境関係法令違反の監視・取締り
海上環境関係法令違反の現況
海上保安庁では、海洋汚染につながる油等の排出、廃棄物の投棄等の法令違反に対して、巡視船艇・航空機からの監視・取締りや、沿岸部における陸上からの取締りを実施しています。平成24年に海上保安庁が摘発した海上環境関係法令違反の送致件数は562件であり、前年と比較して31件減少しました。種類別に見ると、船舶からの油の不法流出や、廃棄物や廃船の不法投棄が多くなっています。 これらの違反は、適正な処理費用や設備の整備費用を惜しんでの行為であることが多く、その形態も、夜陰に紛れた不法排出や不法投棄、船名や船体番号を隠した上での投棄等悪質・巧妙なケースが見受けられます。平成24年6月12日、青森海上保安部は青森県むつ湾でホタテの養殖残さ約2トンを不法投棄したとして、12名を検挙しました。この事件において投棄漁業者は、周囲に船がいないことを確認してホタテ残さの投棄を行い、投棄後は操業をカモフラージュするなど取締りを警戒し巧妙な犯行を行っていました。
外国船舶による海洋汚染の状況
平成24年に海上保安庁が我が国周辺海域において確認した外国船舶による汚染件数は21件(前年比13件減少)で、このうち19件が油による汚染でした。海域別に見ると、我が国領海内が15件、領海外(排他的経済水域(EEZ)又は公海)が4件でした。外国船舶による海洋汚染の取締りでは、船舶の航行の利益を考慮し、担保金制度を適用するとともに、公海において外国船舶による海洋汚染を確認した場合等は、その船舶の旗国に対して違反事実の通報を行い、適切な措置を求めています。平成24年は、担保金制度の適用件数は11件、旗国への通報件数は2件でした。 2 海洋環境調査
海洋汚染の調査
海上保安庁では、海洋環境汚染の現況を正確に把握するため、東京湾等の主要港湾において、定期的に測量船により海水及び海底堆積物を採取し、油分、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、重金属等の調査を行っています。 放射能調査
核実験等や旧ソ連・ロシアによる放射性廃棄物海洋投棄による海洋の環境に及ぼす影響を把握するため、日本近海において、海水及び海底堆積物を採取し、人工放射性物質の調査を実施しています。また、原子力艦が寄港する横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)において、周辺住民の安全を確保するため、海水及び海底堆積物を採取し、定期的に放射能調査を行っています。さらに、平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故に対応する総合モニタリング計画(平成24年3月15日モニタリング調整会議改定)に基づき、東京湾、福島県沖及び茨城県沖においても放射能調査を行っています。 未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール
海上保安庁では、次世代を担う子どもたちを主な対象とした海洋環境教室などを通じ、幼い頃から環境保全の心を養ってもらえるよう、啓発活動に取り組んでいます。 これらの啓発活動の一環として、毎年、全国の小・中学生を対象に「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を実施しており、平成24年は、全国から29,318点の作品が寄せられました。 それぞれの部で海上保安庁長官賞に選ばれた作品はこの3点です。
3 海洋環境保全のための指導・啓発
海洋汚染を防止し、海洋環境を保全するためには国民の皆様の意識を高めていただくことが重要です。そのため、海上保安庁では、ボランティアや地方公共団体等とも連携し、全国各地で海洋環境保全に関する指導・啓発活動を実施しています。特に、6月は「未来に残そう青い海」をスローガンに掲げ、海事・漁業関係者等を対象とした海洋環境保全講習会や訪船指導、一般市民を対象とした海洋環境保全教室の開催等を重点的に実施しています。
4 全国海の再生プロジェクト
海洋環境保全のためには、海上保安庁が単独で取り組むだけではなく、関係機関と連携した効果的な取組みを実施することも重要です。その取組みの一つとして、海上保安庁は「全国海の再生プロジェクト」に参画しています。東京湾のように背後に大都市を抱えた閉鎖性の高い海域では、生活排水等が流れ込むうえ、外海との海水の交換が起こりにくいため、水質汚濁による水産動植物への悪影響等の問題が発生しています。「全国海の再生プロジェクト」では、全国4海域(東京湾、大阪湾、伊勢湾及び広島湾)において、水質環境の把握や汚濁メカニズムの解明のため、国、自治体、大学・研究機関、民間企業等が連携して各種施策を推進しています。海上保安庁では、東京湾千葉港内の千葉灯標においてモニタリングポストを運営し、海洋環境の常時把握に努めているほか、人工衛星を利用した赤潮等の常時観測も行っています。
海上保安庁では、海洋環境調査を通じ、海洋汚染の現況を的確に把握するとともに、海上環境関係法令違反に対しては、厳格に監視・取締りを実施します。また、国民の皆様に対する指導・啓発活動を推進し、法令遵守意識の高揚を図ります。さらに、関係機関等との連携により、海洋環境保全のための取組みをより効果的に推進していきます。 |