海上保安レポート 2013

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 領海・EEZを守る海上保安庁


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

2 生命を救う > CHAPTER1 海難救助
2 生命を救う
CHAPTER1 海難救助

海では、船舶事故や海浜事故により、毎年多くの命が失われています。

海上保安庁では、海難等による死者・行方不明者をできる限り減少させるため、安全意識の高揚等の海難防止思想の普及・啓発に努めるとともに、海難等の発生に備えた救助体制の充実強化、民間救助組織等との連携・協力等に努めています。また、実際に海難等が発生した場合には、早期に救助勢力を投入して、迅速な救助活動を行っています。

平成24年の現況

平成24年の船舶海難の発生隻数は2,261隻で、これに伴う死者・行方不明者は78人でした。

また、船舶海難によらない乗船中の人身事故者数は939人、この他海浜における人身事故者数は1,932人で、これらに伴う死者・行方不明者は1,299人でした。

平成24年の緊急通報用電話番号「118番」による船舶海難の発生情報の通報(第一報)は1,889件であり、間違い電話等を除いた全体の通報件数の70%を占め、このうち1,262件が携帯電話からの通報でした。

海上保安庁では、海難等に迅速かつ的確に対処するため、ヘリコプターからの降下・吊り上げ救助技術、潜水能力、救急救命処置能力を兼ね備えた機動救難士の配置を進め、平成23年度に特殊救難隊とともに日本沿岸の大部分をカバーする機動救難体制を確立しました。また、平成24年度には、各航空基地等に、現場での高度な判断や機動救難士への指揮等業務の統括を行う上席機動救難士を1名ずつ配置し、更なる救助・救急体制の充実を図りました。


■死者・行方不明者数の推移
死者・行方不明者数の推移
■機動救難士の配置状況
機動救難士の配置状況
救助者の搬送
▲救助者の搬送
今後の取組み
1 海難情報の早期入手
118番通報を受け付ける職員
▲118番通報を受け付ける職員

海上保安庁では、海上における事件・事故の緊急通報用電話番号「118番」を運用するとともに、「緊急通報位置情報システム」を導入しています。このシステムにより、携帯電話からの「118番」通報の際に、音声とあわせて位置情報を受信することで、迅速かつ的確な対応が可能となっています。

さらに海上保安庁では、世界中どの海域からでも衛星等を通じて救助を求めることができる「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度(GMDSS)」に基づき、24時間体制で海難情報の受付を行っています。

今後も、これらのツールを有効に活用しながら、海難情報の早期入手と初動対応までの時間短縮に努めていきます。


2 救助・救急体制の充実強化及び救助・救急能力の向上
水中作業を行う潜水士
▲水中作業を行う潜水士

海上保安庁では、救助・救急体制の充実のため、特殊救難隊機動救難士潜水士といった高度で専門的な知識・技能を有する救助活動のエキスパートの配置・養成に努めています。また、海難等により生じた傷病者の搬送中に、容態に応じた適切な処置を行えるよう、専門の資格を有する救急救命士を配置するとともに、救急救命士が実施する処置の質を医学的観点から保障するメディカルコントロール体制の更なる充実強化を図っていきます。さらに、巡視船艇・航空機の高機能化とともに、救助資器材の整備等を行うことにより、救助・救急体制の充実強化を図っています。

また、行方不明者の捜索を迅速かつ的確に行うためには、正確な漂流予測が必要となります。

このため、リアルタイムの海潮流を反映した漂流予測システムを活用し、より精度の高い漂流予測を目指します。


3 他機関との協力体制の充実

広い海をカバーするためには、日頃から警察・消防等の救助機関や民間救助組織との密接な連携・協力体制を確立しておくことが重要です。特に、沿岸部で発生する海難等に対しては、空白地域のない救助エリアの確保や円滑な救助活動を実施できるよう、合同海難救助訓練等を通じて、公益社団法人日本水難救済会やNPO法人日本ライフセービング協会などの民間救助組織との連携・協力体制の充実に努めていきます。

我が国周辺海域で発生する海難等には、中国、韓国、ロシア、米国等といった国の救助調整本部(RCC)と協力して合同で捜索・救助を行うなど、引き続き連携を図っていきます。また、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約(SAR条約)」に基づき、任意の相互救助システムである日本の船位通報制度(JASREP)を米国の通報制度(AMVER)と連携して運用し、引き続き効率的で効果的な海難救助に努めます(平成24年JASREP参加船舶3,086隻)。


日韓合同捜索救助訓練(1) 日韓合同捜索救助訓練(2)
▲日韓合同捜索救助訓練(1) ▲日韓合同捜索救助訓練(2)