海上保安レポート 2022

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 守り抜く、日本の海。


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

6 海上交通の安全を守る > CHAPTER III. ウォーターアクティビティ等の安全対策
6 海上交通の安全を守る
CHAPTER III. ウォーターアクティビティ等の安全対策

海上保安庁では、船舶の運航及びウォーターアクティビティ等の沿岸海域における活動に伴う事故の減少並びに事故が発生した場合の救助率の向上を目指しています。

特に、船舶事故(アクシデント)の6割以上を占めるプレジャーボートの事故や、カヌー、SUP(スタンドアップパドルボード)、遊泳、釣り等のウォーターアクティビティ中の事故に対して積極的な海難防止活動を行っています。

令和3年の現況
1 海難防止活動

事故を防止するためには、船舶操縦者やウォーターアクティビティ愛好者の安全意識の向上を図ることが重要です。

このため、海上保安庁では、国の関係機関や民間の関係団体と連携し、漁港やマリーナ等における訪船指導や海難防止講習会、小中学生を対象とした海上安全教室の開催、安全啓発リーフレットの配布による啓発活動を行っています。また、ウォーターアクティビティごとの事故防止のための情報をまとめた総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」を開設して情報発信等を行っており、令和3年4月には、スマートフォンやタブレットに対応したリニューアル版を公開しています。

マリンレジャー活動が活発となる夏季には、「海の事故ゼロキャンペーン」を実施し、官民の関係者が一体となって海難の未然防止を図っています。

また、酒酔い操縦や危険操縦の禁止、適切な見張りの実施等の小型船舶操縦者が遵守すべき事項に違反することは、重大な事故につながりかねないことから、違反者に対する調査や是正指導を行っています。

安全啓発リーフレット

安全啓発リーフレット

このような中、水上オートバイの危険操縦事案や衝突死亡事故が発生したことから、再発防止に向け、関係機関等と連携し合同パトロールを実施したほか、地方自治体主催の海の安全利用に向けた官民連絡会議等に参画して条例制定等に協力しています。

「海の事故ゼロキャンペーン」ポスター

「海の事故ゼロキャンペーン」ポスター

総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」

総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」

海上安全教室

海上安全教室

2 海上安全指導員

プレジャーボートによる事故を防止するためには、海上保安庁のみならず、モーターボート等の愛好者が自助、共助の考えに基づく対応をとることが重要です。

海上保安庁では、昭和49年から、プレジャーボートの安全運航のため、指導・啓発等の安全活動を積極的に行っている方々を「海上安全指導員」として指定しており、現在、全国で約約1,500名の海上安全指導員が活動しています。

また、近年、多様化・活発化しているウォーターアクティビティに対応していくため、新たな海上安全指導員制度の構築に向けた検討を進めています。

ウォーターセーフティガイドのリニューアル

令和3年4月から総合安全情報サイト「ウォーターセーフティガイド」のリニューアル版を公開しています。リニューアル後のウォーターセーフティガイドは、各アクティビティの情報にアクセスしやすい構成にし、スマートフォンやタブレット端末に対応するなど、ユーザーにとって見やすく使いやすいサイトとなっています。

また、SUP編では、事故事例をふまえてライフジャケットの正しい着用方法等について資料を掲載し、安全啓発を図りました。順次、各アクティビティの新たな安全情報の掲載や情報の更新による内容の充実強化を図っていくこととしています。

ウォーターセーフティガイドのリニューアル版

ウォーターセーフティガイドのリニューアル版

安全啓発リーフレット(SUP)の掲載

安全啓発リーフレット(SUP)の掲載

SNSを活用した安全啓発に係る情報発信

海上保安庁では、より多くの国民の皆様に安全啓発に関する情報をお知らせするための手段として、Twitter、YouTube等を積極的に活用しています。

〇Twitterを活用した情報発信

日々の海難発生状況から得られた事故防止に有用な情報をTwitterを活用して、タイムリーに発信しています。

〇YouTubeを活用した安全啓発動画の配信

地域特性に応じた事故防止に有用な情報を分かりやすく発信するため、YouTubeを活用しています。

安全啓発動画の例として、乗揚げ海難が多発している海域において、安全なルートを航行している際に見える周囲の構造物等の状況を操縦者の目線で撮影し、注意点を盛り込んだ動画を発信しているほか、転覆による海難が多発しているミニボートについて、転覆を防止するためのポイントをまとめた動画を発信しています。

プレジャーボートの安全啓発動画

プレジャーボートの安全啓発動画

ミニボートの安全啓発動画

ミニボートの安全啓発動画

3 「海の安全情報」の提供

海上保安庁では、海難を防止することを目的として、プレジャーボートや漁船等の操縦者、海水浴や釣り等のマリンレジャー愛好者等に対して、ミサイル発射や港内における避難勧告等に関する緊急情報、海上工事や海上行事等に関する海上安全情報、気象庁が発表する気象警報・注意報、全国各地の灯台等で観測した気象現況(風向、風速、気圧及び波高)、海上模様が把握できるライブカメラ映像等を「海の安全情報」として提供しています。

海の安全情報」は、パソコンやスマートフォン等で入手することができ、特に、スマートフォン用サイトでは、GPSの位置情報から現在地周辺の緊急情報、気象の現況等を地図画面上に表示することで、手軽に利用することができます。

また、緊急情報、気象警報・注意報及び気象現況については、事前に登録されたメールアドレスに配信するサービスを提供しています。

さらに、より多くの利用者に情報を知らせるため、英語ページの開設、Lアラートへ配信するなどのサービスも提供しています。

*災害時における迅速かつ効率的な情報伝達を目的として、国や地方公共団体等が発する災害情報等を多様なメディアに一斉配信するための、一般財団法人マルチメディア振興センターが運営する共通基盤システム。

今後の取組
実効性のある安全対策の策定

ウォーターアクティビティに関連する専門的な知識・技能等を有する民間の方7名を「海の安全推進アドバイザー」に委嘱し、定期的に会議を開催して安全対策を推進する上で必要な助言をいただいています。

今後も海の安全推進アドバイザーとともに多様化・活発化するウォーターアクティビティの海難減少を目指し、より実効性のある安全対策を策定していくこととしています。

官民連携による安全対策の推進

訪船指導、海難防止講習会や合同パトロールといったあらゆる機会を通じ、国の関係機関・民間団体等と連携を強化し、多様化・活発化するウォーターアクティビティに対応した安全対策を推進していきます。

安全対策の重点化

過去の海難の発生頻度や死傷者の発生状況などの視点から分析を行い、船舶事故(アクシデント)に重点を置いたターゲットを定め、よりきめ細やかな安全対策を講じていくこととしています。