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1 治安の確保
CHAPTER V. テロ対策
世界各地において、イスラム過激派やその思想に影響を受けたとみられる者等によるテロ事件が多発しており、また、ISIL等のテロ組織が日本を含む各国をテロの標的として名指し、アジア諸国においてもISIL等によるテロが相次ぐなど、現下のテロ情勢は依然として非常に厳しい状況です。さらに、ドローンを使用したテロ等、新たなテロの脅威への対策も重要な課題となっています。
海上保安庁では、巡視船艇・航空機による監視警戒、関連情報の収集、関係機関との緊密な連携による水際等でのテロ対策に加え、海事関係者や事業者等に対して自主警備の強化を働きかけるとともに、不審事象の情報提供を依頼するなど、官民一体となったテロ対策を推進し、より一層テロの未然防止に万全を期していきます。
令和3年の現況
海上保安庁では、巡視船艇・航空機による原子力発電所や石油コンビナート等の重要インフラ施設警戒のほか、旅客ターミナル・フェリー等のいわゆるソフトターゲットにも重点を置いた警戒を実施しています。
このほか、国際テロ等を未然に防止するために、人及び物の流れの拠点である港湾においてテロ対策をはじめとする保安対策の一層の強化を図っており、令和3年においても、引き続き新型コロナウイルス感染症の感染予防措置を十分にとったうえで、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」に基づき、外国からの入港船舶261隻に対して立入検査を行いましたが、テロとの関連が疑われる船舶は認められませんでした。国際港湾においては、港湾危機管理官を中心に、警察、入管、税関、港湾管理者等の関係機関や港湾関係者と緊密に連携しながら、不審事案発生時に備えた合同訓練や港湾保安設備の合同点検等、間隙のない水際対策に取り組んでいます。
また、平成28年12月の「海上保安体制強化に関する関係閣僚会議」で決定した「海上保安体制強化に関する方針」の下、原発等テロ対処・重要事案対応体制の強化を段階的に進めています。
原発警戒
関係機関との合同訓練
立入検査の状況
港湾保安設備の合同点検
新たな脅威への対応
近年、世界各国でドローンを用いたテロ事案等が発生しており、我が国においてもそのような新たなテロの脅威に対し、「重要施設の周辺地域上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」等を適切に運用して未然防止を図っているところです。海上保安庁においては、関係機関と連携して不審なドローンの飛行に関する情報を把握するとともに、ドローン対策資機材を活用するなど、複合的な対策を講じています。
「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」における対応
令和3年7月に開催された「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」は、選手村や競技会場等の多くが臨海部に位置するほか、いくつかの競技が海上で実施されたため、全国から勢力を集結させ、巡視船艇等151隻、航空機8機、職員約3,300名を動員し、過去最大規模の体制でこの海上警備に臨みました。
2か月を超える長期間、連日の猛暑や新型コロナウイルス感染症への対策に万全を期しながら、選手村・競技会場周辺へ巡視船艇を配備するとともに、東京湾向けの危険物積載船・長距離フェリーや東京港内における水上バスへの警乗、急速に普及を続けるドローンへの対策、多数設置したカメラによる監視体制の強化を行いました。
また、大会期間中は、海事・港湾業界団体に加えて、海域利用者の協力を得て、選手村や競技会場等の周辺海域に航行自粛海域及び停留自粛海域を設定したほか、「海上・臨海部テロ対策協議会」の枠組みにより各分野の専門家による研修や机上訓練及び旅客船を使用した実動訓練を実施し、官民一体となって大会の安全を確保しました。
海上警備の状況
官民一体となったテロ対策の推進
公共交通機関や大規模集客施設といった、いわゆるソフトターゲットはテロの標的となる傾向にあり、これらは日常の身近なところで発生する可能性があるため、この対策には国民の理解と協力が不可欠です。
このため、海上保安庁では、官民が連携したテロ対策の推進に力を入れており、臨海部のソフトターゲットである旅客ターミナルやフェリー等施設の運営者等とともにテロ対策を進めています。
具体例としては、平成29年度から、海事・港湾業界団体と関係機関が参画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を開催し、官民一体となったテロ対策について議論・検討しています。このほか、事業者によるテロ対策の実効性向上を目的とした「海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集(第二版)」や業界全体としてテロ対策に取り組む姿勢のアピール等を目的とした「テロ対策啓発用ポスター」を作成し、海事・港湾の事業者等へ配布しました。
海上・臨海部テロ対策協議会の状況
海上・臨海部テロ対策ベストプラクティス集(一部)
テロ対策啓発用ポスター
今後の取組
海上保安庁においては、今後ともテロが現実の脅威であるとの認識の下、テロの未然防止やテロ発生時の対処にかかる体制を確実に整備していくとともに、関係機関や事業者等とより緊密に連携し、官民一体となってテロ対策に取り組んでいきます。
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