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CHAPTER IV. 密輸・密航対策
近年発生している海上からの密輸については、一度に大量の薬物を密輸する事犯が相次いで発生しており、その手口は、小型船舶を利用した瀬取り(洋上における積荷の受け渡し)、海上コンテナ貨物への隠匿等によるもので、大口化・巧妙化の傾向が続いています。また、船舶利用による密航については、かつて多発した密航船による集団密航ではなく、一般商船を利用した数名規模の不法上陸という態様であり、その手口は小口化の傾向が続いています。特に密輸事犯は、暴力団等や外国人の組織的な関与が見受けられることから、国際的な組織犯罪が行われているものと考えられます。
海上保安庁では、関係機関と連携し、我が国の治安及び法秩序を乱す密輸・密航事犯を厳格に取締り、密輸・密航の水際阻止を図っています。
令和3年の現況
密輸事犯について
令和3年の薬物事犯の摘発件数は、10件でした。このうち覚醒剤に関しては、令和3年6月、海上コンテナ貨物に隠匿された約297kgの密輸入事件を関係省庁と合同で摘発しました。また、11月には海上コンテナ貨物の炭に覚醒剤を練り込むという手口による密輸入事件を関係機関と合同で摘発し、国内への大量の薬物流入を水際で阻止しました。この手口による密輸入事件の摘発は国内では初の事例となります。
近年、海上からの密輸事犯は、小型船舶を利用した瀬取りや海上コンテナ貨物への隠匿といった手法により、一度に大量の薬物等を密輸する事犯が発生しており、密輸手口は大口化・巧妙化の傾向が続いています。
密航事犯について
令和3年における密航事犯の摘発件数は5件であり、摘発人数については不法上陸者4名、不正上陸者4名を摘発しました。また、犯罪インフラ※事犯の摘発件数は2件であり、不法就労助長者4名、偽造在留カード行使目的所持者1名を摘発しました。
近年の船舶利用による密航は、小型船や貨物船、訪日クルーズ船を利用した数名規模の密航やブローカーが関与する事犯が発生するなど、その手口は小口化の傾向が続いています。海上保安庁では、外国から入港する船舶に対する立入検査のみならず、港湾の監視・警戒、国内外関係機関との連携及び情報収集活動を行うことにより、不法上陸の水際阻止を図るなど、犯罪インフラ事犯の取締りに重点を置いています。
※犯罪インフラとは、犯罪を助長し、又は容易にする基盤のこと。外国人に係る犯罪インフラ事犯には、不法就労助長、旅券・在留カード等偽造、偽造在留カード所持等が挙げられる。
今後の取組
海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との連携を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域において、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な立入検査や密輸・密航防止に係る啓発活動を実施し、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。
香港来覚醒剤密輸入事件(埼玉県飯能市)
令和3年6月、第三管区海上保安本部及び国際組織犯罪対策基地は、関係機関と合同で、香港から来た海上貨物のレーザーカッティングマシンに隠匿された覚醒剤約297kg(末端密売価格約178億円相当)の密輸入事件を摘発し、カナダ人1名を国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等に関する法律違反(規制薬物としての所持)で逮捕しました。その後、覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)で同カナダ人を再逮捕し、貨物輸入仲介者の中国人1名を逮捕しました。
押収した覚醒剤
港湾運送業者による不法就労助長事件(茨城県神栖市)
令和2年7月、鹿島海上保安署は、茨城県神栖市鹿島港のふ頭において、船内荷役に従事する外国人作業員を認め、内偵捜査により、横浜市中区に所在する港湾運送会社が外国人不法就労者を雇用していることを突き止めました。
警察と合同捜査体制を構築し、令和3年1月、被疑者4名(不法就労助長罪で3名、資格外活動で1名)を逮捕するとともに、関連施設において中国人4名(不法残留で3名、旅券不携帯で1名)を出入国管理及び難民認定法違反で逮捕しました。また、その後の継続捜査により同年2月、資格外活動者の雇い入れを斡旋した中国人1名も同法違反で逮捕しました。
不法就労していた港湾施設
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