海上保安レポート 2019

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 増大する危機に立ち向かう


目指せ! 海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

CHAPTER I. 海洋調査
CHAPTER II. 海洋情報の提供
Column Vol.14 水深60mに沈んだ証拠を探せ!〜小型船に対する衝突逃走事件〜

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

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5 海を知る
Column Vol.14
水深60mに沈んだ証拠を探せ!〜小型船に対する衝突逃走事件〜
第九管区新潟海上保安部

平成30年4月19日早朝、佐渡島の南西沖約6kmの沖合で、小型船と外国籍貨物船が衝突したとの通報がありました。この衝突により海に転落した小型船の船長は幸いにも付近にいた別の船に救助されましたが、小型船自体は水深約60mの海底に沈没し、また、外国籍貨物船は現場に留まることなく航行していきました。新潟海上保安部や佐渡海上保安署、新潟航空基地は、巡視船艇や航空機を発動して衝突現場付近に向かい、真新しい衝突痕のあった外国籍貨物船を直ぐに発見しましたが、外国籍貨物船は衝突したことを認めようとしませんでした。また、衝突時は濃霧だったため目撃者も無く、衝突した事実を立証するためには、沈んだ小型船に残る衝突痕と外国籍貨物船にあった衝突痕とが一致するかを確認する必要がありました。

しかし、水深約60mに沈んだ小型船を見つけだすことは至難の業です。このため、まずは衝突現場付近にいた他の船からの聞き込みや、外国籍貨物船に搭載された航行援助装置に残っていた航跡データなどを解析し、衝突位置を大まかに把握することから始めました。

その後、海底に沈んだ小型船を見つけるため、第九管区海上保安本部海洋情報部が所有する「サイドスキャンソナー」により衝突現場付近の海底をくまなく捜索しました。そして3日間におよぶ捜索の結果、ついに小型船の姿を捉えることができました。

最後に巡視船「やひこ」潜水士と民間潜水士が協力して、沈んだ小型船から衝突痕を試料として採取し、その後、この衝突痕が外国籍貨物船にあったものと一致することが確認されたため、衝突時に外国籍貨物船を操船していた者を逮捕することが出来ました。

今回の事件は証拠の乏しい大変難しい捜査となりましたが、第九管区に所属する各職員が各々の持っている知見や能力を遺憾なく発揮したことにより、無事に完遂することができました。

サイドスキャンソナー
サイドスキャンソナー
海底に沈んだ船体
海底に沈んだ船体
サイドスキャンソナー画像
サイドスキャンソナー画像