海上保安レポート 2019

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 増大する危機に立ち向かう


目指せ! 海上保安官


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

CHAPTER I. 海洋汚染の現況
CHAPTER II. 海洋環境保全対策
Column Vol.10 伊勢湾内を漂流するゴミは答志島に漂着―離島の生活をゴミから守る取組

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

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3 青い海を守る
Column Vol.10
伊勢湾内を漂流するゴミは答志島に漂着―離島の生活をゴミから守る取組
第四管区鳥羽海上保安部

三重県鳥羽市にある「答志島」は、古来、海の幸を朝廷や伊勢神宮に献上してきた歴史があります。この海の幸を育んでくれるのが、伊勢湾に注ぐ川の流れで運ばれる豊富な栄養分です。そのため、答志島では、ノリやワカメなどの養殖漁業が盛んですが、その一方で栄養分だけではなく、流木や生活ごみなども一緒に運ばれた結果、伊勢湾を漂流するゴミ約1万トンのうち、約40パーセントが答志島に漂着し、地域の生活に影響を与えています。

鳥羽海上保安部では、伊勢湾の下流域にある離島の生活を、漂着するゴミから守るという課題に、「伊勢湾の上流域から下流域の離島までは、海でつながっている。」「海を活動の場とする私たちは、これを一本の線として考え行動できる。」と考え、環境保全啓発活動や上流域での生活ゴミの違法投棄取締りを、離島へのごみ漂着問題に対する一つのアプローチと捉えて重点的に取り組んでいます。

そして、私たちは、「この問題に取り組んでいる色々な立場の人の声を結集し、一つの声として離島の現状を発信したい!」と考え、平成30年6月、伊勢湾の上流域における生活ゴミの違法投棄取締りに対するテレビ局の密着取材の機会を、地域の皆さんと活用することにしました。鳥羽海上保安部に対する密着取材だけでなく、伊勢湾内を漂流するゴミが答志島に流れ着くメカニズム、流れ着いたゴミにより何が起こっているか、子ども達による体験学習などの取材も行われ、この問題に関わる様々な人の声が一つになって放送されました。

この情報発信がきっかけとなり、10月14日、答志島でのゴミ漂着問題に取り組む「22世紀奈佐の浜プロジェクト」(答志島の住民が運営責任者)が主催する答志島でのフィールドワークにおいて、東海各地から参加した研究者や大学生など多くの方々に、鳥羽海上保安部の取り組みを説明し、同じ問題意識を持つ人たちとつながる縁も生まれました。

地域の課題に対し、人と人とのつながりのなかで、海上保安庁ならではの取り組みをして行く。これが私たち鳥羽海上保安部の地域への寄り添い方です。

離島漁業者の声[提供:名古屋テレビ放送(株)]
離島漁業者の声[提供:名古屋テレビ放送(株)]
上流域で投棄された生活ごみ
上流域で投棄された生活ごみ