海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、国民の皆様への指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組みを実施しています。
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3 青い海を守る
CHAPTER II. 海洋環境保全対策
海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、国民の皆様への指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組みを実施しています。 1 海上環境関係法令違反の監視・取締り
海上保安庁では、海洋汚染につながる油の不法排出、廃棄物の不法投棄等の海上環境関係法令違反に対し、巡視船艇・航空機による海・空からの監視・取締りに加え、沿岸部では陸上からの監視・取締りを実施しています。 平成30年に海上保安庁が摘発した海上環境関係法令違反は659件であり、前年と比較して33件増加しました。違反の種類別に見ると、船舶からの油の不法排出や、廃棄物、廃船の不法投棄が多くなっています。これらの違反は、適正な処理費用や設備整備への投資を惜しんでの行為であることが多く、その形態も、夜陰に紛れた不法排出や不法投棄、船名や船体番号を抹消した上での廃船の投棄等、悪質・巧妙なケースが見受けられます。 船舶から不法に排出された浮流油
不法に放置された廃船
外国船舶による海洋汚染への対応
外国船舶による海洋汚染については、領海のみならず、EEZにおいても取締りを行っており、平成30年は5隻を検挙しました。なお、国連海洋法条約に基づき、船舶の航行の利益を考慮し、担保金制度を適用しています(平成30年担保金制度適用件数:5件)。 また、我が国の法令を適用できない公海等において外国船舶の油等の排出を確認した場合には、当該船舶の旗国に排出事実を通報し、適切な措置を求めています(平成30年旗国通報件数:9件)。 2 海洋環境調査
海洋汚染の調査
海上保安庁では、海洋汚染の状況を正確に把握するため、閉鎖性の高い港湾等において、測量船により定期的に海水及び海底堆積物を採取し、油分、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、重金属等の調査を継続的に行っています。 放射能調査
海洋環境モニタリングの一環として、核実験や放射性廃棄物の海洋投棄などによる海洋環境への影響を把握するため、日本周辺海域において海水や海底堆積物を採取し、人工放射性物質の調査を継続的に行っています。 また、原子力規制庁が定める実施要領に基づき、原子力艦が寄港する横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)において、周辺住民の安全・安心を確保するため、定期的に海水や海底堆積物を採取し、放射能調査を行うとともに、原子力艦の入港前、寄港時、出港後の放射能調査を行っています。さらに、平成23年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故に対応する政府の総合モニタリング計画に基づいた放射能調査も行っています。 海洋環境調査(表面採水作業)
海洋環境調査(採泥作業)
3 海洋環境保全のための指導・啓発
海洋汚染の大半が故意や取扱不注意等による人為的な要因により発生していることから、海洋汚染を防止し、海洋環境を保全するためには、国民の皆様に意識を高めていただくことが重要です。そのため、海上保安庁では、ボランティアや地方公共団体と連携し、全国各地で海洋環境保全に関する指導・啓発活動を実施しています。 特に、毎年6月は「未来に残そう青い海」をスローガンとする「海洋環境保全推進月間」として、海事・漁業関係者、マリンレジャー等を行う方々を対象とした海洋環境保全講習会や訪船指導、一般市民の方々を対象とした海洋環境保全教室の開催等様々なイベントを重点的に実施しています。 平成30年も、日本財団が主催している「海と日本プロジェクト」と連携し、全国の108か所の海岸等で、約31,400人の参加により約37,000袋ものごみの収集・分類を行いました。 海洋環境保全教室
海浜清掃
訪船指導
4 海の再生プロジェクト
海洋環境の保全・再生のためには、海上保安庁が単独で実施する取組みだけでなく、関係機関が連携した取組みを推進することが重要です。このような取組みの一つとして、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び広島湾では「海の再生プロジェクト」が進められています。これらのプロジェクトでは、海上保安庁を含む国や自治体、教育・研究機関、民間企業、市民団体等の関係機関が連携し、陸域からの汚濁負荷削減対策、海域の環境改善対策及び環境モニタリングを推進しています。 海上保安庁では、「海の再生プロジェクト」の各種施策のうち、環境モニタリングに取り組んでおり、測量船によって海水の透明度や溶存酸素などの水質観測を定期的に行っています。夏季には上記の各湾において環境に関する一斉調査に参加し、関係機関と連携して湾内や周辺の環境の状況把握に努めています。特に「東京湾環境一斉調査」では事務局を務め、水質調査・生物調査・環境啓発活動といった各種取組の取りまとめを実施しています。平成30年度の東京湾環境一斉調査では、民間企業や市民団体を含む169の企業が水質調査に参加しました。 平成30年度の東京湾環境一斉調査の結果
(底層の溶存酸素量(DO)分布) 一部に、溶存酸素量が3.0mg/Lを 下回った貧酸素水塊の分布が見られた 未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクールの開催
図画展示による海洋環境保全思想の普及活動
海上保安庁では、海洋環境保全啓発活動の一環として、「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を開催しています。 平成30年で第19回目を迎えた本コンクールは、海上保安制度創設70周年記念としても開催し、全国の小中学生から応募のあった31,800点の作品の中から特別賞(国土交通大臣賞)、海上保安制度創設70周年記念賞及び海上保安庁長官賞等を決定しました。受賞作品をはじめ、全国から集まった作品は、各地でのさまざまなイベント及び広報に活用され、海洋環境保全思想の普及に貢献しています。 特別賞(国土交通大臣賞)
中学生の部
神奈川県 横浜市立中和田中学校3年生 小野﨑 琳さん
石井国土交通大臣による選考
海上保安制度創設70周年記念賞
小学生低学年の部
沖縄県 宮古島市立西辺小学校3年生 砂川 うたさん
海上保安庁長官賞
中学生の部
愛知県 清須市立新川中学校3年生 松田 真優子さん
小学校高学年の部
佐賀県 唐津市立北波多小学校4年生 大倉 和穂さん
小学校低学年の部
徳島県 小松島市立南小松島小学校3年生 豊田 晄平さん
海上保安庁では、海洋環境調査により海洋汚染の現況を的確に把握するとともに、海上環境関係法令違反の厳正な監視・取締りを実施します。また、広く指導・啓発活動を推進するとともに、関係機関と情報共有体制を構築し、各機関と連携・協力して海洋環境保全につながる取組みを推進していきます。 |