海上保安庁では、地震発生直後から、本庁と各管区海上保安本部に災害対策本部等を設置するとともに、大規模な被害の発生が予想されたことから、予め策定された「日本海溝型地震に係る動員計画」に従い、全国から多数の巡視船艇・航空機等を直ちに動員して、人命救助や行方不明者の捜索にあたりました。
また、福島第一原子力発電所の周辺海域での監視警戒、被災港復旧のための水路測量、被害を受けた航路標識の復旧、航路障害物等に関する航行警報等により海上の安全確保に可能な限り対応を行いました。さらに、被災地に支援物資を緊急輸送するなど、全庁を挙げて震災対応に取り組みました。
■東日本大震災における海上保安庁の対応体制 |
地震発生直後は、日本列島沿岸のほぼすべてに津波警報や津波注意報が発表されました。海上保安庁では全管区に対し、巡視船艇等352隻、航空機46機を発動させて、警戒にあたりました。また、全国からヘリコプター搭載型大型巡視船をはじめとして、巡視船艇等54隻、航空機19機の勢力を東北地方太平洋側に集結させました。
これら巡視船艇は指揮船の下で効率的に業務にあたるよう青森船隊、岩手船隊、宮城船隊、福島船隊の4つの船隊に編成されました。また、地震発生日の翌日には被災地の第二管区海上保安本部への応援職員や各県の対策本部への連絡要員の派遣も開始しました。これら迅速な初動体制の構築は、全国組織である海上保安庁の利点です。
■東日本大震災への対応に係る主な出来事 | |
潜水士
潜水士は、転覆や沈没した船舶などから、潜水により遭難者を救出したり、行方不明者を捜索することなどを任務としています。潜水士は、巡視船艇乗組員の中から選抜され、厳しい潜水研修を受けた後、潜水指定を受けた巡視船艇で業務にあたっています。 今回の震災でも、全国の潜水士が被災地に派遣され、大量のがれきが浮遊する海上において、行方不明者の捜索などを行いました。 | ||||||
機動救難士
機動救難士は、海難船舶の遭難者や海上の漂流者をヘリコプターにより迅速に救助する専門家です。ヘリコプターからの降下技術や潜水等の救助技術を有しており、さらには隊員の約半数は救急救命士の資格を有しています。機動救難士は平成14年に発足し、平成24年4月現在、全国8か所の航空基地等に配置され、特殊救難隊とともに日本沿岸の大部分をカバーしています。 今回の震災でも、全国の機動救難士が被災地に派遣され、ヘリコプターからの降下等によって、被災された方々の救助や孤立した集落の調査などを行いました。 | ||||||
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特殊救難隊
転覆した船舶や火災を起こした危険物積載船等における人命救助や火災消火等、高度な救助技術と専門的知識を必要とする特殊な海難に対応するための救助のスペシャリストです。 航空機で全国に即座に展開できるよう、昭和50年に羽田空港内に羽田特殊救難基地が設置され、平成24年4月現在、救急救命士を含む6隊36名体制で24時間出動できる体制をとっています。 今回の震災でも、特殊救難隊が被災地に派遣され、津波により海底に沈んだ車両等の中を捜索したり、福島第一原子力発電所付近の漁港内で放射線管理を行いながら、行方不明者の捜索を行いました。
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機動防除隊
海上に排出された油、有害液体物質、危険物等の防除措置や海上火災の消火及び延焼の防止措置に関する指導、助言及び関係者間の調整を実施するほか、必要に応じて自らも防除措置等を行います。横浜防災基地内の機動防除基地を拠点に4隊16名体制で、全国で発生する海上災害事案に備えています。 今回の震災では、地震・津波により臨海部の危険物貯蔵施設や危険物積載船が被害を受け、危険物等が海上に流出したため、機動防除隊員が現場で防除措置の指導・助言を行いました。 また、福島第一原子力発電所周辺での捜索活動に際し、放射線量の測定等の放射線管理を行いました。
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