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2 領海等を守る
CHAPTER 1 領海警備及びEEZにおける権益の保全
近年、尖閣諸島周辺海域では中国、台湾公船による領海侵入事案や中国、台湾活動家による領有権主張活動事案が発生しています。
また、東シナ海等の我が国のEEZ(排他的経済水域)においては、中国、台湾等の海洋調査船による我が国の同意のない海洋調査活動等が確認されるなど、我が国の海洋権益を脅かす諸外国の活動が活発化しています。
海上保安庁では、こうした緊迫化する情勢に対して、巡視船艇・航空機による領海警備や我が国のEEZにおける監視警戒活動を的確に行い、我が国の主権の確保、海洋権益の保全に努めています。
平成23年の現況
海上保安庁では、「領海等における外国船舶の航行に関する法律」に基づき、我が国の領海等において、正当な理由なく停留・はいかい等を行う外国船舶に対して、立入検査を行い、正当な理由がない場合は領海外への退去命令を発出するなどして領海の安全の確保に努めています。平成23年においては、停留等を行っていた110隻の外国船舶に対して立入検査を実施し、このうち、正当な理由なく領海内で錨泊していた1隻に対して、領海外への退去を命じました。また、台風等の荒天時等には、外国船舶が事前通報をした上で、安全上止むを得ず、領海内の安全な海域に緊急入域する場合がありますが、こうした緊急入域に紛れて不審な活動が行われないよう監視警戒を実施しています。
■ 尖閣諸島をめぐる情勢への対応
中国漁業監視船への対応
平成22年9月以降、中国漁業監視船が尖閣諸島周辺海域をはいかいする事案が発生しており、平成23年は9回確認されています。特に、平成23年8月24日には、2隻の中国漁業監視船が一時的に領海内に侵入し、巡視船による退去要求の結果、領海外へ出域する事案が発生しています。
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▲中国漁業監視船を監視警戒する巡視船(手前) |
領有権主張活動への対応
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▲領有権主張活動家乗船船舶を規制する巡視船(右) |
我が国のEEZが設定された平成8年以降、尖閣諸島周辺海域では、中国、台湾の漁業活動への影響に対する不満や、同諸島の北小島に日本の政治団体が灯台を設置したことを契機に、中国、台湾において「保釣活動」と呼ばれる領有権主張活動が活発化し、活動家が乗船した船舶が同諸島周辺の領海に接近し、または侵入する事案が続発するようになりました。平成23年においては、6月29日に、台湾の活動家等が乗船した台湾漁船「大發(だいはつ)268」が尖閣諸島の接続水域に入域しましたが、巡視船等による警告等により、領海へ侵入することなく、接続水域から出域しました。
外国漁船への対応
尖閣諸島周辺海域においては、年間を通じて中国漁船及び台湾漁船による操業が確認されていますが、特に、平成22年8月中旬から9月上旬にかけて、尖閣諸島周辺の我が国の領海付近において、多数の中国漁船の操業が確認され、このような中、平成22年9月には、中国漁船による公務執行妨害等被疑事件が発生しました。このような状況を踏まえ、海上保安庁では、引き続き、外国漁船に対する厳正な監視・取締りを行っています。
1,000トン型巡視船(拠点機能強化)を石垣海上保安部へ配属替え〜大型巡視船3隻体制へ〜
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▲巡視船「いしがき」 |
尖閣諸島周辺海域を担任水域とする第十一管区海上保安本部の体制強化を図るため、平成23年10月8日付で、第七管区福岡海上保安部所属の巡視船「はかた」を巡視船「いしがき」と船名変更し、第十一管区石垣海上保安部へ配属替えを行いました。同船は拠点機能強化型の1,000トン型巡視船で、ヘリコプター離着船のための甲板を備えるほか、夜間も捜索監視・採証記録が可能な遠隔監視採証装置や機動力のある複合型ゴムボートを搭載しており、この配属替えにより、石垣海上保安部では同型船の体制が3隻体制に強化されました。
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■ 外国海洋調査船への対応
我が国のEEZ等において、外国船舶が海洋の科学的調査を行う場合は、国連海洋法条約に基づき、我が国の事前の同意を得るなどの手続きをとる必要がありますが、近年、我が国の同意を得ない調査活動や同意内容と異なる海域での調査活動が確認されています。海上保安庁では、こうした活動を確認した場合、外務省へ情報提供するとともに、巡視船艇・航空機による警告等を行っています。平成23年においては、こうした活動を行う外国船舶8隻が確認されました。
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▲調査活動中の中国海洋調査船 |
鉱業法の一部改正について〜資源探査に係る許可制度の創設〜
我が国のEEZ等における鉱物資源の探査について、主権的権利を適切に行使するため、平成23年7月22日に鉱物資源探査に係る許可制度の創設等を盛り込んだ「鉱業法の一部を改正する等の法律」が公布され、翌24年1月21日に施行されました。同法の施行に伴い、無許可で探査を行う船舶に対して、鉱業法に基づく立入検査、作業の中止命令等の措置が可能となりました。海上保安庁では、当該活動を行っている船舶に対しては、経済産業省その他関係機関と緊密に連携しつつ適切に対処することとしています。
国連海洋法条約抜粋
(資源探査)
第56条 排他的経済水域における沿岸国の権利、管轄権及び義務
1 沿岸国は、排他的経済水域において、次のものを有する。
(a)海底の上部水域並びに海底及びその下の天然資源(生物資源であるか非生物資源であるかを問わない。)の探査、開発、保存及び管理のための主権的権利並びに排他的経済水域における経済的な目的で行われる探査及び開発のためのその他の活動(海水、海流及び風からのエネルギーの生産等)に関する主権的権利
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■ 北方四島周辺海域における対応
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▲しょう戒中の巡視艇(手前)とロシア警備艇 |
ロシア官憲による日本船舶の被だ捕事案等の発生が予想される北方四島周辺海域においては、巡視船艇を配備し、出漁漁船に対し直接又は漁業協同組合等を通じて被だ捕防止指導及び漁業関係法令の遵守指導を行いました。
今後の取組み
海上保安庁では引き続き関係機関と連携・協力し、領海警備やEEZにおける監視警戒に万全を期します。また、「領海等における外国船舶の航行に関する法律」の運用に関しては、平成20年7月の施行以来、運用に際して一定の知見や経験が得られたことから、今後さらに円滑に運用することを目指します。さらに、平成22年末から海上警察権の充実強化について検討を進めてきましたが、今後は、この検討結果に基づき、「海上保安庁法」及び「領海等における外国船舶の航行に関する法律」の一部改正や内部規則の改正を行い、海上保安官の執行権限等の充実強化を図るほか、装備・要員の充実等についても、将来を見据えた体制の整備を進め、引き続き、我が国周辺海域における近隣諸国の海洋活動の活発化といった国際情勢に的確に対応していきます。
海上警察権の強化に向けた体制整備
尖閣諸島を含む東シナ海等における広域的な常時監視体制を整備するとともに、遠方・重大事案への対応を可能とする体制の整備を目指し、平成24年度は以下の取組を実施します。
1) 被害制御・長期行動能力等を備えたしきしま級巡視船及び搭載ヘリコプターの整備
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▲起工溶接のスイッチを押す鈴木久泰長官 |
平成23年10月5日、「しきしま」級巡視船2隻目の起工式が建造を請負う株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド横浜工場において行われました。同巡視船は、平成22年度に計画され、平成24年度進水、平成25年度就役に向けて建造が進められており、海上保安庁では、予算・規模ともに最大級の巡視船となります。
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2) 荒天下飛行能力、航続性、夜間捜索監視能力等を備えたヘリコプターの整備
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3) 大型巡視船における不審事象の探知・事案対応能力の強化のための運用司令科の配置
平成23年4月、大型巡視船に「運用司令科」が新設されました。「運用司令科」は、情報収集・分析、対処方針の立案・調整に関する業務を所掌する科で、同科の新設により、不審事案の早期認知、高度な判断が求められる事案へのより的確な対応が可能となります。
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