海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、海洋環境保全に関する指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組を実施しています。
|
3 青い海を守る > CHAPTER II. 海洋環境保全対策
3 青い海を守る
CHAPTER II. 海洋環境保全対策
海上保安庁では、海上環境関係法令違反の監視・取締り、海洋環境の調査、海洋環境保全に関する指導・啓発活動等、海洋環境を保全するための総合的な取組を実施しています。 1 海上環境関係法令違反の監視・取締り
海上保安庁では、海洋汚染につながる油の不法排出、廃棄物の不法投棄等の海上環境関係法令違反に対し、巡視船艇・航空機による海・空からの監視・取締りに加え、沿岸部では陸上からの監視・取締りを実施しています。 令和4年に海上保安庁が送致した海上環境関係法令違反は618件であり、前年と比較して43件減少しました。違反を種類別に見ると、船舶からの油の不法排出や、廃棄物、廃船の不法投棄が多くなっています。これらの違反は、適正な処理費用や設備整備への投資を惜しんでの行為であることが多く、その形態も、夜陰に紛れた不法排出や不法投棄、船名や船体番号を抹消した上での廃船の投棄等、悪質・巧妙なケースが見受けられます。 不法に投棄された廃船 外国船舶による海洋汚染への対応
外国船舶による海洋汚染については、領海のみならず、EEZにおいても取締りを行っております。令和4年は8隻を検挙しました。なお、国連海洋法条約に基づき、船舶の航行の利益を考慮し、担保金制度を適用しました。 また、我が国の法令を適用できない公海等において外国船舶の油等の排出を確認した場合には、当該船舶の旗国に排出事実を通報し、適切な措置を求めています。 会社ぐるみで廃養殖用金網計3,900kg投棄
令和4年9月、唐津海上保安部は、佐賀県外津漁港内に、不要となった産業廃棄物である生け簀用金網約3,900kgを投棄したとして、水産会社の代表を含む3名を廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で検挙し、検察庁へ送致しました。 漁港内をパトロール中の海上保安官が枠だけが残された生け簀を発見し、当庁潜水士により現場海域を捜索したところ海底に投棄された金網を見つけるに至ったものです。 海中から揚収された金網の状況 潜水士が発見した金網 2 海洋環境調査
海洋汚染の調査
海上保安庁では、海洋の汚染の防止及び海洋環境の保全並びに海上災害の防止のため、閉鎖性の高い港湾等において、海水や海底堆積物を採取し、油分、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、重金属等の調査を継続的に行っています。 放射能調査
海洋環境モニタリングの一環として、核実験等による海洋環境への影響を把握するため、日本周辺海域において海水や海底堆積物を採取し、放射性核種の調査を継続的に行っています。 また、原子力規制庁が定める実施要領に基づき、原子力艦が寄港する横須賀港(神奈川県)、佐世保港(長崎県)、金武中城港(沖縄県)において、周辺住民の安全・安心を確保するため、定期的に海水や海底堆積物を採取・分析するとともに、原子力艦の入港前、寄港時、出港後の放射能調査を行っています。 海底堆積物の採取作業 海水の分析作業 3 海洋環境保全に関する指導・啓発
海洋汚染を防止し、海洋環境を保全するためには、海事・漁業関係者、マリンレジャー等を行う方々のみならず、広く国民の皆様と一緒に海洋環境保全活動に取り組んでいくことが重要です。 海上保安庁では、毎年5月30日から6月30日までの期間を「海洋環境保全推進月間」とし、「未来に残そう青い海」をスローガンに、海洋環境保全に関する指導・啓発活動を重点的に実施するため、海事・漁業関係者、マリンレジャー等を行う方々を対象とした海洋環境保全講習会、若年層を含む一般市民の方々を対象とした海洋環境保全教室、地域の方々とも連携した海浜清掃などのイベントを開催しています。 同期間中、環境省と「CHANGE FOR THE BLUE」を推進する日本財団の共同事業である「海ごみゼロウィーク」一斉清掃に、海上保安庁も積極的に協力し、地方自治体、学校機関、公益財団法人海上保安協会等とも連携しつつ、地域の方々のご理解とご協力を得た上で、全国の海岸等において、海浜清掃を行っています。あわせて海洋環境保全に関する啓発活動を実施することで、多くの方々に身近なごみが海洋汚染に結びついている現状を体感してもらうなど、海洋環境保全の意識高揚につなげるための活動を重点的に行っています。 また、海に関心を持ってもらうとともに、海洋環境保全思想の普及を図ることを目的として、全国の小中学生を対象に、海上保安協会との共催で「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を開催しています。 訪船指導 若年層に対する海洋環境保全教室 漂着ごみ分類調査 地域中学校との海浜清掃活動 4 海の再生プロジェクト
海洋環境の保全・再生のために東京湾、伊勢湾、大阪湾及び広島湾では「海の再生プロジェクト」が進められています。これらのプロジェクトでは、国や自治体、教育・研究機関、民間企業、市民団体等の関係機関が連携し、陸域からの汚濁負荷削減対策、海域の環境改善対策及び環境モニタリングを推進しています。 海上保安庁は、「海の再生プロジェクト」の各種施策のうち、環境モニタリングに取り組んでおり、測量船によって海水の透明度や溶存酸素等の水質観測を定期的に行っています。夏季には上記の各湾において環境に関する一斉調査が開催されており、海上保安庁も関係機関と連携して湾内や周辺の環境の把握に努めています。特に東京湾における一斉調査では事務局の一員として、水質調査・生物調査・環境啓発活動といった各種取組の取りまとめを実施しています。令和4年度の東京湾環境一斉調査では、民間企業や市民団体を含む182の機関が水質調査に参加しました。 令和4年度の東京湾環境一斉調査の結果(底層の溶存酸素量(DO)分布)
一部に、溶存酸素量が3.0mg/Lを下回った貧酸素水塊の分布が見られた 海上保安庁では、海洋環境調査により海洋汚染の現況を的確に把握するとともに、海上環境関係法令違反の厳正な監視・取締りを実施します。また、広く指導・啓発活動を推進するとともに、関係機関と情報共有体制を構築し、各機関と連携・協力して海洋環境保全につながる取組を推進していきます。 未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクールの開催
海上保安庁では、将来を担う小中学生の子どもたちに海洋環境について考える機会を提供することで海への関心を高め、海洋環境保全思想の普及とともに、海上保安業務への理解の促進を図ることを目的として、公益財団法人海上保安協会との共催で「未来に残そう青い海・海上保安庁図画コンクール」を開催しています。 23回を迎えた図画コンクールでは、応募者が手軽に描いてポストに投函できる「はがきサイズ」で図画作品を募集し、全国の小中学生から17,403点の応募がありました。審査及び選考の結果、特別賞(国土交通大臣賞)、海上保安庁長官賞等の受賞作品が決定しました。 応募作品については、力作ばかりで、綺麗な海の風景と付近に捨てられているゴミを一緒に描くなど、メッセージ性の高い作品が多数見受けられました。我々の尊い財産であるこの豊かな海を後世に残せるよう、皆様と一緒に海洋環境保全活動に取り組んでいきたいと思います。 特別賞(国土交通大臣賞)
国土交通大臣による表彰 宮城県 美里町立不動堂小学校3年生 新田 芽以(にっためい)さん
海上保安庁長官賞
(小学生低学年の部) 神奈川県 横須賀市立高坂小学校2年生 河野 壮真(かわのそうま)さん
(小学生高学年の部) 広島県 東広島市立三ツ城小学校6年生 横田 梨乃(よこたりの)さん
(中学生の部) 愛知県 西尾市立平坂中学校3年生 森 友里香(もりゆりか)さん
※受賞者の学年は、応募当時 |