海上保安レポート 2020

はじめに


TOPICS 海上保安庁、この1年


特集 海上保安庁新時代


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

5 海を知る > CHAPTER II. 海洋情報の提供
5 海を知る
CHAPTER II. 海洋情報の提供

海洋は、海運や水産業、資源開発、マリンレジャー等、さまざまな目的で利用されており、それぞれの目的によって必要となる情報が異なります。海上保安庁では、海洋調査により得られた多くの海洋情報を基に、それぞれの目的に合わせ、ユーザーの利用しやすい形での情報提供に努めています。

令和元年の現況
1 海上交通の安全のために

海上保安庁では、船舶の安全航行に不可欠な海図電子海図表示システム(ECDIS)で利用できる航海用電子海図(ENC)等の作製・刊行を行っています。

令和元年には、海洋調査により得られた最新データを基に、海図(改版45図)、航海用電子海図の新改版(うち新刊5セル)、水路書誌(新刊6冊、改版13冊)等を刊行しました。

水路図誌等の種類と刊行版数(令和元年末現在)

水路図誌等の種類と刊行版数(令和元年末現在)
2 海洋情報の利活用活性化のために

海洋情報は、船舶の航行の安全や、資源開発、マリンレジャー等のさまざまな目的で利用されています。

このため、ユーザーが目的に応じて、利用しやすいように海洋情報を提供することが非常に重要となっています。

海上保安庁は、日本海洋データセンター(JODC)として、長年にわたり海上保安庁が独自に収集した情報だけでなく、国内外の海洋調査機関によって得られた海洋情報を一元的に収集・管理し、インターネット等を通じて国内外の利用者に提供しています。

日本海洋データセンター(JODC)
海洋情報クリアリングハウス https://www.mich.go.jp/
「海洋状況表示システム(海しる)」 https://www.msil.go.jp/
QRコード
海徳海山にカルデラ、中央火口丘及び溶岩流を発見

海上保安庁では、東京の南約1,000kmにある「海徳海山(1984年に噴火)」の調査を実施し、海底に広がるカルデラや中央火口丘、中央火口丘の裾野から流れる溶岩流等の火山地形を発見しました。調査結果は、海上交通安全を確保するための基礎資料となるほか、同火山を研究する上でも非常に重要な資料となります。直径3kmにわたるカルデラが発見されたことは、過去に大きな火山活動があったことを示唆しており、海上保安庁では引き続き海徳海山の定期監視を続けていきます。

海徳海山の位置

海徳海山の位置

海徳海山の海底地形図

海徳海山の海底地形図

海氷情報センター開設50年

第一管区海上保安本部では、毎年12月20日頃から翌年4月末頃までの期間、「海氷情報センター」を開設して、北海道周辺海域の海氷に関する情報(海氷速報)を、毎日インターネットで提供しています。

海氷情報センターは、昭和45年3月に択捉島の単冠(ひとかっぷ)湾にて発生した、海氷による漁船の集団海難を契機に同年12月に開設されたもので、令和元年12月で50年を迎えました。

50年間で様々な技術が進歩し、船舶や航空機、沿岸での目視観測情報に加え、近年は人工衛星画像を利用した海氷分布状況の解析が可能となりました。情報の提供方法についても、ラジオ放送からファクシミリへ、そしてファクシミリからインターネットと変わってきています。インターネットについては、平成30年12月〜平成31年4月シーズンのアクセス件数が180万件以上と、非常に多くの方々に利用されています。また、平成31年4月より運用を開始した海洋状況表示システム(海しる)においても海氷情報の提供を行っています。

海氷情報センターでは、引き続き、海氷による船舶等の海難を防止するために、海氷の分布及び動向を迅速かつ的確に把握し、より正確な海氷情報の提供をしていきます。

海氷の中を進む巡視船「宗谷」〈昭和53年〉

海氷の中を進む巡視船「宗谷」〈昭和53年〉

海氷速報

海氷速報

また、平成19年に策定された海洋基本法に基づく海洋基本計画に従い、各機関に分散する海洋情報の一元化を促進するため、国の関係機関等が保有するさまざまな海洋情報の所在について、一元的に検索できる「海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)」を平成22年3月より運用しています。

さらに、国や地方自治体等が海洋調査で取得した情報をはじめ、海洋の利用状況を把握するうえで必要となるさまざまな情報を地図上で重ね合わせて閲覧できるウェブサービス「海洋台帳」を運用し、海洋再生可能エネルギーへの期待が高まるなか、洋上風力発電施設の適地選定等に役立てられてきました。

平成28年には、総合海洋政策本部にて決定された、「我が国の海洋状況把握の能力強化に向けた取組」において、海洋におけるさまざまな人為的または自然の脅威への対応と海洋の開発及び利用促進のため、関係府省・機関が連携して、海洋観測を強化するとともに、衛星情報を含め広範な海洋情報を集約・共有する「海洋状況表示システム(以下「海しる」)」を新たに整備することとされました。

海しる」は、海上保安庁が整備・運用を行ってきた海洋台帳等をシステムの基盤として活用し、この基盤に関係府省・機関が収集したさまざまな情報を追加し、広域性・リアルタイム性の向上を図るなど、利便性を高めたシステムです。海上保安庁では、内閣府総合海洋政策推進事務局の主導・支援のもと、「海しる」を整備し、平成31年4月に運用を開始しました。

海しる(海洋状況表示システム)のイメージ
「うみしる」

「うみしる」

海上保安庁では、「我が国における海洋状況把握(MDA)の能力強化に向けた今後の取組方針」等の政府決定に基づき、平成31年4月17日より、各関係機関が保有する海洋情報を集約・共有するための基盤システムである「海洋状況表示システム」(愛称:海しる)の運用を開始し、利用者からご好評をいただいているところです。現在は、利用者からいただきました「海しる」へのご要望を基に、掲載情報の充実や機能の拡充を進めております。

そこで、より幅広いご要望をいただくべく、まずは「海しる」を広く知っていただくため、政府広報用動画及び「海しる」マスコットキャラクター「うみしる」を新たに作成し、令和元年10月末より公開しました。

なお、「海しる」はスマートフォンにも対応しており、まさに「海の今」を手軽に映し出すことができます。動画とともに、是非「海しる」に触れて下さい。

海しる」が広く社会に浸透し、それに伴い多くの利用者の皆様とともに「海しる」を大きくより良いものに育てていくべく、今後もさまざまな取組を進めていきます。

四国から紀伊半島海域まで、一目でパッと〜広域津波シミュレーション、「海しる」でも〜

海上保安庁は、11月5日の「世界津波の日」「津波防災の日」に向けて、四国〜紀伊半島海域に及ぶ広域の津波シミュレーション結果のアニメーションを令和元年10月31日から「海洋状況表示システム(愛称:海しる)」に掲載を開始しました。

本取組により、広範な津波の挙動をアニメーションで分かりやすく確認できます。

また、「海しる」のWeb-GIS特性を生かし、各種地図、海底地形、船舶通航量等の多様な情報の重畳や拡大・縮小、検索、表示海域の変更も簡単にできるため、津波防災の啓発等に役立てられることが期待されます。

今後、順次、提供海域を拡充していきます。

津波シミュレーション画像のサンプル

津波シミュレーション画像のサンプル
今後の取組

引き続き、海洋調査によって得られた最新データを基にして、海図等の水路図誌を刊行していきます。

また、JODCをはじめ、海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)海洋状況表示システム(海しる)の管理・運用を適切に行うとともに、政府機関や関係団体等との連携を一層強め、掲載情報の充実や機能の拡充に努めます。これらの取組を通じて、目的に合わせて利用しやすい海洋情報の提供を推進していきます。