海上保安レポート 2023

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 海上保安能力のさらなる強化


海上保安庁で働く「人」


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 海上交通の安全を守る

7 海をつなぐ


語句説明・索引


図表索引


資料編

7 海をつなぐ > CHAPTER III. 国際機関との協調
7 海をつなぐ
CHAPTER III. 国際機関との協調

海に関して、関係各国が連携・協調しつつ、各国が有する知識・技能を世界共通のものとしていくため、さまざまな分野の国際機関が存在します。海上保安庁では、さまざまな業務を通じて得られた知識・技能を活かし、国際社会に貢献するため、これらの国際機関の取組みに積極的に参画しています。

令和3年の現況
1 国際海事機関(IMO)での取組

IMOは、船舶の安全や船舶からの海洋汚染の防止等の海事問題に関する国際協力を促進するために設立された国連の専門機関で、現在175の国が正式加盟国、3地域が準加盟となっています。

令和3年、IMOの委員会である海上安全委員会(MSC)がオンライン形式で開催されたことから、海上保安庁職員が同委員会へ出席し、文書の提案等を行い、航行の安全及び船舶からの汚染の防止・規制に係る事項等の国際議論に貢献しました。

潮岬沖推薦航路の設定について

令和4年11月2日から11日にかけて開催された、国際海事機関(IMO)の第106回海上安全委員会において、我が国が提案した和歌山県潮岬沖における推薦航路が採択されました。

推薦航路とは、海上人命安全条約(SOLAS条約)第X章第10規則に基づき、IMOが航路を指定する制度の一つで、中心線を定めることにより、対面通航を推奨するものです。

和歌山県潮岬の沿岸は、東京湾、伊勢湾、大阪湾などを結ぶ海上交通の要衝となっており、外国船舶を含む船舶の通航量が多く、加えて漁業活動も活発な海域です。推薦航路の設定により船舶交通の整流化が図られるとともに、国際的にも広く認知され安全性の向上が期待されます。

なお、潮岬推薦航路は潮岬灯台の南3.5海里以内を航行する船舶に対して適用され、令和5年6月1日、日本時間午前9時から運用を開始します。

※推薦航路は、海図上に航路の中心線、航行方向が記されるほか、航路の西端位置、東端位置及び適用海域の範囲を示す位置にバーチャルAIS航路標識のシンボルマークが記載されます。

潮岬沖推薦航路の設定について
2 国際水路機関(IHO)での取組

IHOは、より安全で効率的な航海の実現のため、海図などの水路図誌の国際基準策定、水路測量技術の向上や各国水路当局の活動の協調を目的とし昭和45年に設立された国際機関で、現在98か国が加盟しています。

IHOは地域的な連携の促進や課題の解決のため、世界の各地域に地域水路委員会を設置しており、我が国は東アジア水路委員会(EAHC)に昭和46年設立当時から加盟しています。海上保安庁は、50年以上に渡りシーレーン沿岸国において水路測量や海図作製技術向上に貢献しており、平成30年9月のEAHC総会においてEAHCの議長国に就任し、議長国として域内の技術向上や航海安全に取り組んできました。

令和4年9月、海上保安庁がEAHC議長国として開催した第14回EAHC総会では、我が国のリーダーシップの下、EAHC加盟国の活動報告が行われたほか、EAHCにおける人材育成や今後の運営方針等について活発な議論が交わされ、東アジアにおける水路機関の連携を深めることができました。総会の最後には、副議長国のインドネシアに議長職を引き継ぎました。

令和4年10月には、第6回IHO理事会がモナコで開催され、理事国である我が国は、IHOの運営や計画に係る重要議題について積極的に発言し、日本のプレゼンスを示すとともに、IHO活動方針の決定に多大に貢献しました。

令和4年には、IHOとユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が共同で設置し、世界の海底地形名を標準化する「海底地形名小委員会」が2回開催され、日本提案の海底地形名14件が承認されました。同委員会では、海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長が副議長を務めています。

第6回IHO理事会の様子

第6回IHO理事会の様子

EAHC議長交代式の様子

EAHC議長交代式の様子

第14回EAHC総会の様子

第14回EAHC総会の様子

3 国際航路標識協会(IALA)での取組

IALAは、航路標識の改善、船舶交通の安全等を図ることを目的とした国際的な組織で、現在93の国家会員その他工業会員等が加盟しています。また、そのうち24か国は理事国に選任され、国際基準等の承認手続きを行っており、日本は昭和50年から理事国に選任されています。加えて、IALAの常設技術委員会の一つであるENAV委員会議長に交通部企画課国際・技術開発室専門官が、平成28年から就任しています。これは航行援助分野における国際活動に対する海上保安庁の取組及び同委員会議長としてのこれまでの実績が評価されたものです。

4 アジア海賊対策地域協力協定・情報共有センター(ReCAAP−ISC)での取組

アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)とは、我が国の主導で締結されたアジアの海賊・海上武装強盗問題に有効に対処するための地域協力を促進するための協定です。この協定に基づき、情報共有、協力体制構築のため、平成18年にシンガポールに情報共有センター(ISC)が設立されました。設立以来、海上保安庁は、このISCへ職員1名を派遣し、海賊情報の収集・分析・共有及び法執行能力向上支援を積極的に推進しており、令和4年12月には、締約国の実務者トップを対象とした会議「Capacity Building Senior Officer’s Meeting(CBSOM)2022」(フィリピンで開催)に参画するなど、アジア地域における海賊対策に係る各種取組に貢献しています。

Capacity Building Senior Officer’s Meeting2022の様子

Capacity Building Senior Officer’s Meeting2022の様子
出典:ReCAAPーISC

5 北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)での取組

NOWPAPは国際連合の機関である国連環境計画(UNEP)提唱のもと、閉鎖水域の海洋汚染の管理及び資源の管理を目的とした地域海計画(RSP)の一つで、北西太平洋地域4か国(日本、韓国、中国及びロシア)により採択されています。海上保安庁は、この計画の中でデータ情報ネットワークに関する地域活動センター(DINRAC)、海洋環境緊急準備・対応に関する地域活動センター(MERRAC)において会合等に参加し、同地域の海洋汚染の防止及び海洋環境保全のための取組に積極的に関与・貢献しています。

北西太平洋地域海行動計画