海上保安庁では、海上交通の安全確保を図るため、海上交通ルールを遵守するように指導を行っており、特に、船舶交通がふくそうする海域においては、航路を閉塞するような社会的影響が著しい大規模な船舶事故の発生数を「ゼロ」とすることを目標として、海上交通センターにおいて24時間体制で的確な情報提供や航行管制を行い、船舶事故の未然防止に努めています。
|
6 海上交通の安全を守る > CHAPTER II. ふくそう海域・港内等の安全対策
6 海上交通の安全を守る
CHAPTER II. ふくそう海域・港内等の安全対策
海上保安庁では、海上交通の安全確保を図るため、海上交通ルールを遵守するように指導を行っており、特に、船舶交通がふくそうする海域においては、航路を閉塞するような社会的影響が著しい大規模な船舶事故の発生数を「ゼロ」とすることを目標として、海上交通センターにおいて24時間体制で的確な情報提供や航行管制を行い、船舶事故の未然防止に努めています。 船舶交通がふくそうする東京湾・伊勢湾・名古屋港・大阪湾・備讃瀬戸・来島海峡及び関門海峡での船舶事故隻数は740隻*と、船舶事故全体の4割以上を占めております。これらの海域で事故が発生した場合には、尊い人命や財産が失われるとともに、航路の閉塞や交通の制限により物資輸送が滞ることで、国際貨物輸送の99%以上(重量ベース)を海上輸送に頼る我が国の経済活動に大きな影響を及ぼすこととなります。海上保安庁では、ふくそう海域等での海上交通の安全を確保するため、次の取組を実施しています。 *民間救助機関等が対応した海難隻数を除く 1 海域毎の交通ルール及び安全対策
海上の交通ルールには、基本的なルールを定めた「海上衝突予防法」のほか、特別なルールとして東京湾・伊勢湾・大阪湾を含む瀬戸内海に適用される「海上交通安全法」、法令で定める港に適用される「港則法」があります。海上保安庁では、これらの法令を適切に運用することで、海上交通の安全確保を図っています。 ふくそう海域における安全対策
海上交通の要衝となっている東京湾・伊勢湾・名古屋港・大阪湾・備讃瀬戸・来島海峡及び関門海峡には、海上交通センターを設置して、船舶の動静を把握し、航行の安全に必要な情報の提供や、大型船舶の航路入航間隔の調整を行うとともに、巡視船艇との連携により、通航方式に従わない船舶への指導等を実施しています。 港内における安全対策
港則法に基づき、全国の87港を特定港に指定し、船舶の入出港状況の把握、危険物荷役の許可、停泊場所等の指定を行っており、また、一部の港においては船舶の出入港管制を行っております。 沿岸における安全対策
AISを活用した航行安全システムを運用し、日本沿岸において乗揚げや走錨のおそれのあるAIS搭載船に対して注意喚起や各種航行安全情報を提供しています。 2 海上交通安全法等の一部を改正する法律
近年の台風等の異常気象が激甚化・頻発化する状況を踏まえ、さらなる事故防止対策の強化のため、令和3年7月1日に施行された海上交通安全法等の一部を改正する法律により、 これにより、特に勢力の強い台風などが東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海を直撃すると予想される場合、大型船等の一定の船舶に対し、湾外などの安全な海域への避難勧告(湾外避難等勧告)を発出することなどができるようになりました。 また、それぞれの海域に、海上保安庁、行政機関、海域利用者等からなる協議会が設置され、勧告の対象となる台風の規模など具体的な運用ルールをあらかじめ策定し、台風が実際に直撃した際に円滑かつ迅速に対応できる体制を整えました。 「湾外避難等勧告」の初運用
令和4年9月、勢力の強い台風が立て続けに発生し、日本各地で猛威を振るいました。 大型で非常に強い台風11号の九州・中国地方への接近を受け、海上保安庁では、令和3年7月の改正海上交通安全法により制度化された「湾外避難等勧告」を「瀬戸内海西部海域」を対象として全国で初めて発出しました。 また、大型で猛烈な台風14号が接近した際には、「瀬戸内海西部海域」、「瀬戸内海中部海域」、「大阪湾」の3つの海域を対象として同勧告を発出しました。 同勧告発出にあっては、各海域に設置された協議会で予め策定された運用ルールに基づき、協議会構成員との協議を重ねたうえで行っています。 同勧告発出後は、管区海上保安本部や海上保安部署、海上交通センターにより、安全情報の提供や対象船舶の動静を把握するなど、同勧告解除まで緊迫した状況が続きましたが、これら台風の接近に伴う大型船舶の海難は発生する ことなく、一連の対応が奏功し船舶事故の未然防止に寄与しました。海上保安庁としましては、引き続き台風等の異常気象時における船舶交通の安全確保に努めてまいります。 協議会開催状況 海域の監視・情報提供体制の強化
船舶事故の未然防止を図るため、レーダーや監視カメラ等、海域の監視体制を強化するとともに、船舶に対して、自然災害や海域の状況に関する、より正確な情報を提供していきます。 船舶の航行安全のための技術開発
航行管制業務において、船舶の衝突、乗揚げ、走錨等の危険を回避するための新たな技術開発を推進し、船舶の航行安全の向上を図ることとしています。 自動運航船に係る検討の実施
近年、世界的に自動運航船に対する関心が高まってきており、我が国においても令和7年までの実用化を目指し、技術開発等が進められています。このような状況をふまえ、海上保安庁では、国際海事機関(IMO)や関係国の海事機関等による自動運航船関連の会議に参加しているほか、国内では関係省庁や海事関係者が集まる会議に参加するなどして、自動運航船の実用化を見据えた海上交通ルールに関する検討を行っています。 引き続き、国内外の技術開発の動向を把握しつつ、必要な課題について検討を行っていきます。 |