(1) 管轄海域確定のための海洋調査
海上保安庁は、従来から、我が国の領海等の限界線の基準となる領海基線の確定のため、主要な沿岸域について精密な測量を実施し、低潮線等の基礎資料の収集・整備を進めてきたところである。
また、直線基線等を海図上に描画し、公表するための作業を進めており、8年度から我が国の直線基線等を描画した海図を順次刊行している。
(2) 大陸棚の限界の設定等に係る海洋調査
海上保安庁では大陸棚の範囲の設定に必要な基礎資料を得るため、本邦周辺の調査海域において、大型測量船による海底地形・地質構造・地磁気・重力等の大陸棚調査を実施している。これまでの調査結果から、本邦南方海域が、領海基線から200海里を越えて大陸棚を主張し得る海域として予測されるため、現在、鋭意解析を進めているところである。また、南鳥島周辺海域についても、大陸棚の限界の設定の可能性に係る調査を進めている。
(3) 海洋測地の推進
我が国の領海・排他的経済水域等は、陸地等からの距離で確定されるため、その基準となる島しょ等の正確な位置を決定する必要があり、現在日本測地系で表示されている日本列島の位置を世界測地系に基づき正確に表示するため、57年から、米国航空宇宙局が中心となって推進している測地衛星の国際共同観測に参加し、和歌山県の下里水路観測所において、人工衛星レーザー測距装置を利用した観測を実施している。
また、本土基準点と離島等の位置関係を高精度で求めるため、62年度からは、離島等に可搬式レーザー測距装置を持ち込み、本土基準点である下里水路観測所との同時観測等を実施することにより、領海基線等の基準となる島しょ等の位置を世界測地系で正確に決定している。
(4) 日本海洋データセンターの機能充実
海洋データの二次・三次利用を図るため国内的・国際的に海洋に関するデータ・情報の収集、管理、提供業務を実施するとともに、データ管理の機能拡充を図り、また、全世界的な問題となっている地球温暖化問題等の解明のための研究に参画している。
(5) 地球規模の高度海洋監視システムによる気候予知(ARGO計画の推進)
平成11年4月の日米コモンアジェンダ会合で、中層フロート(海洋中を自動的に浮き沈みしながら水温データ等を取得し、通報する装置)を全世界の海洋に展開するARGO計画を推進し、海洋の状況をリアルタイムで監視把握するシステムの構築が提案されている。これにより、地球規模の海洋変動等の把握解明が進展、気候変動の予報が可能となり、ひいては、海洋や海流の変動予測が期待されることから、海上保安庁では、海上活動の安全確保につながる海洋変動モデルの構築のため、海洋短波レーダー等により我が国周辺海域の海洋変動把握観測を強化し、積極的に地球規模の高度海洋監視システム構築に寄与していくこととしている。