海上交通の安全を確保するため、海上交通ルールの遵守の指導、海上交通情報の提供等安全航行のための施策を行っている。
(1) 海上交通三法とその運用
我が国における船舶交通の安全を確保するための法律としては、基本的な海上交通ルールを定める海上衝突予防法が制定されているほか、船舶交通がふくそうする東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の三海域については海上交通安全法が、入出航船舶が多い港内については港則法が、それぞれ海上衝突予防法の特別法として制定され、これらに基づく各種の規制に加えて所要の安全指導を行っている。
(2) ふくそう海域における海上交通情報機構等の整備・運用
東京湾及び瀬戸内海等においては、船舶の安全かつ能率的な運航を確保するため、海上交通に関する情報提供と航行管制を一元的に行うシステムとして海上交通情報機構等の整備・運用を行っている。
(3) 大規模プロジェクトの安全対策
大規模プロジェクトのの建設は、海上交通等に大きな影響を与えるおそれがあるため、事業主体等の関係者に対し、建設中及び完成後の航行安全対策等を確立し、それに基づく警戒船の配備、各種航行援助施設の整備等について指導している。また、付近海域における船舶の航行の制限、警戒のための巡視船艇の配備等必要な措置を講じている。
(4) 危険物の輸送の安全対策
タンカー等危険物積載船舶の海難は、一歩誤れば、原油等の流出、火災等により事故船舶のみならず周辺海域、施設に対しても重大な影響を及ぼすものであり、事故の未然防止のため、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の三海域と港内を中心に、タンカーの衝突と乗揚げの防止及び危険物荷役時の安全確保に重点を置いて安全対策を講じている。
また、核分裂性物質及びその他の多量の放射性を有する放射性物質等の海上輸送については、輸送中の事故等による災害を防止するため、運送の日時及び経路、連絡体制、運送中の海難による災害を防止するために必要な事項等について指示・指導を行うとともに、船舶の動静の把握、航路の警戒等を行っている。
(5) 航行安全のための指導等
海難を防止するためには、海難防止思想の普及・高揚並びに向上を図ることが有効であることから、訪船指導、海難防止講習会等により、海上交通関係法令等の周知徹底、安全運航の励行等を指導するとともに、毎年期間を定め、官民一体となって全国海難防止強調運動を実施し、海事関係者のみならず広く国民に対して海難の防止を呼び掛けている。さらに、各管区では、地域特性を踏まえ、台風による海難を防止するための海難防止強調運動、自動操舵海難防止運動等の地方海難防止強調運動を実施している。
また、海難防止の実行を期するには、海事関係者等自らが主体となった活動が不可欠であり、海難防止を目的とする各種民間団体等が中核母体となって、これらの活動を活発に推進することが必要であるため、海上保安庁では、(社)日本海難防止協会等これら民間団体等の自主的活動を支援するなど、その育成強化に努めている。
(6) 航海の安全確保等のための情報提供
海上交通安全確保のため、従来から実施している海図、水路誌等の刊行及び水路通報、航行警報のインターネットによる提供等情報提供の充実を図っており、外国人の運航する船舶の海難防止対策の一環として、逐次、英語版水路誌を刊行していく。また、近年、電子技術の発達に伴い、船舶の大型化・省力化が進む中海上保安庁では、国際的に統一された基準により従来からの紙海図と同等以上の情報量と精度を有する航海用電子海図の刊行を行っており、今後も引き続き同図の刊行及び最新維持情報の提供を行っていく。
さらに、「海の基本図」等海上保安庁が多数保有するアナログデータの数値化を行い、海上保安業務はもとより、海洋開発・環境保全等多角的な利用が期待される国土空間データ基盤として、陸域と整合のとれた海域のGIS基盤情報の整備を図ることとしている。