■海洋環境保全のための監視取締り
海上保安庁では、国民の健康で快適な生活環境を守るため、巡視船艇・航空機を効率的に運用した監視取締りを行い、海洋環境の保全に努めている。
また、廃棄物の処理に関する規制の強化や環境問題について関心が高まりつつあるなか、不法投棄の手口が悪質・巧妙化し、海上環境事犯が潜在化していく傾向がみられることから、関係省庁との連携を一層強化し、防犯団体や地域住民からの情報収集体制を構築するなど、監視取締り体制の充実強化を図っている。
さらに、外国船舶による油や廃棄物の不法排出等の海上環境事犯については、船舶の航行の利益に考慮し、国連海洋法条約に基づき、違反者の刑事手続き継続のための出頭等を担保する担保金制度を適用するとともに、外国船舶の乗組員に対する関係法令の周知及び油排出事犯等の防止指導を行っている。
■海洋環境保全のための指導・啓発活動
海上保安庁では、全国各地で発生する油や廃棄物等による海洋汚染の実態を把握するため「海洋汚染発生状況調査」等を実施している。この調査結果によれば、海洋汚染の大半は船舶における燃料給油時等の取扱不注意による排出や廃棄物不法投棄等の人為的要因により発生し、海洋環境保全の重要性に対する認識が未だ十分であるとはいえない状況にある。
このため、海上保安庁では、海洋環境保全のための指導・啓発活動に力を入れているところであり、海事・漁業関係者を対象とした油、有害液体物質等の排出事故防止、ビルジ等の適正処理等を指導する「海洋環境保全講習会」、海上保安官が直接船舶に赴く「訪船指導」、一般市民及び将来を担う子供達を対象とした「海洋環境保全教室」を実施している。また、6月を「海洋環境保全推進月間」としてこれらの活動を集中的に行うほか、小中学生を対象として「未来に残そう青い海・図画コンクール」を開催している。
また、船舶の不法投棄は、原因者自身による廃船の適正処理に対する意識の欠如が主な原因であるが、平成17年度から国土交通省の協力のもと(社)日本舟艇工業会が主体となり、廃船となったFRP船を効率的に回収、リサイクルを行うシステム「FRP船リサイクルシステム」の運用を開始しているところであり、平成19年度には全国展開されることとなっている。海上保安庁では同システムが円滑に運用されるよう周知活動に協力し、今後も継続して「廃船指導票」を用いた、原因者自身による廃船の早期適正処理を指導すると共に、悪質な原因者を検挙するなどして、船舶の不法投棄防止を図る。
■全国海の再生プロジェクト
東京湾のような背後に大都市を抱えた閉鎖性の高い海域では、生活排水などが大量に流れ込むことに加え、外海との海水の循環が起こりにくいため、富栄養化による慢性的な赤潮の発生や、有機汚濁による貧酸素水塊が生じ、水産動植物へ大きな影響を与えるなどの多くの問題が発生している。「全国海の再生プロジェクト」ではこれらの問題を改善するため、海上保安庁及び国土交通省を中心とする関係省庁及び地方公共団体が連携して、陸域からの汚濁負荷削減対策、海域の環境改善対策、環境モニタリング等の各種施策を実施しているところであり、平成14年に始まった東京湾再生プロジェクトを皮切りに、現在全国4海域(東京湾、大阪湾、伊勢湾、広島湾)で推進している。
全国海の再生プロジェクトに関するホームページ
http://jcgcm301/info/saisei/index.html