海上保安レポート2010
JAPAN COAST GUARD ANNUAL REPORT 2010
 
特集Web版 「科学の力で海を拓く」~大陸棚限界への挑戦~
 
7.今後の海洋調査と海洋情報基盤整備

 大陸棚限界画定のための調査は、広大な海域を舞台に、それに携わる人と技術を総合し結集したものでした。そして、常にその中心にいたのが海上保安庁でした。長年にわたる調査の成果に基づき我が国は大陸棚延長の申請を行い、現在、大陸棚限界委員会の審査が始まっています。
 一方、大陸棚調査が行われて海洋の基礎的なデータが蓄積が進んだ太平洋側の海域とは異なり、それ以外の海域についてはほとんど調査が行われておらず、領海や排他的経済水域における基盤的なデータの収集が遅れています。排他的経済水域などの我が国が権利を有する海域は、これをしっかりと管理・保護しつつ、その恵みを最大限に受けるために計画的に利用、活用することが重要です。そしてこのためには海域の調査を推進し、海洋の管理、保全、利活用のために必要となる基礎的なデータを収集することが欠かせません。大陸棚調査は終了しましたが、現在、海上保安庁では我が国の海洋権益を保全するために重要でありながらデータが不足している海域について、集中的な調査を行っています。
 現在、このような調査の結果、様々なデータが取得されて、そのような海域の詳細が明らかになりつつあります。中には、海底資源開発や防災に役に立つ情報も得られています。例えば、平成20年の調査で、海上保安庁は沖縄本島北西沖で熱水鉱床が存在する可能性が高い地形を発見しました(海上保安レポート冊子のトピックス参照)。また、平成21年の調査では、山口県北西沖で、活断層である菊川断層の延長上に断層運動に伴って形成されたと考えられる地形を鮮明に捉えることに成功しました。活断層の長さを把握することは、そこで発生する地震の最大震度の予測に重要なデータとなり、防災計画を策定する上で有益な情報となります。海上保安庁としては、今後も日本海、東シナ海での海洋調査を継続・強化していく予定です。


 
 
前のページ   前のページ TOP 次のページ   次のページ
 
海上保安庁TOP