東京湾における海上交通管制の一元化を実現するための法改正及び体制・施設の整備などにより、次のような効果が期待されています。
(1)非常災害発生時の船舶に対する命令制度
(これまで)平成23年の東日本大震災においては、東京湾にも津波が到達しており、東京湾内の各港から船舶が湾央に避難するなどしたため、一時的に400隻以上の船舶(通常は100隻程度)により混雑する状態となり、衝突などのリスクが高まりました。
【発生2日後(3月13日 2300現在)】 約400隻の状況】
(今後)
平成30年1月に運用が開始される新たな東京湾海上交通センターにおいて、東京湾にある大型船舶の情報や動静を一元的に把握し、万が一非常災害が発生した場合においても、船舶が迅速かつ円滑に避難できるよう海上保安庁長官が必要な内容を命令することとなります。
◎命令の具体例
「海保丸は○○航路に近すぎるので錨地に移動して下さい」
「海保丸は××の海域から移動しないで下さい」
「指示するまでの間、東京湾に入らないで下さい」
また、海上保安庁長官が命令を船舶の船長へ伝えることができるよう、
- 海上保安庁長官は、非常災害が発生した旨及びこれにより当該指定海域及び指定港において当該危険が生ずるおそれがある旨を当該指定海域及びその周辺海域にある船舶に対し周知させる措置(「非常災害発生周知措置」)をとらなければならない
- 「非常災害発生周知措置」がとられた場合には、海上保安庁長官が船舶の航行の安全を確保するために提供する情報を聴取しなければならない
- 東京湾の一定の海域に入域しようとする船舶の船長は海上保安庁長官に船名などを通報しなければならない
ことなども定めています。
(2)船舶からの通報の一本化
(これまで)東京湾に入域し、湾内の港に入港しようとする船舶は、
ア 海上交通安全法に基づき、浦賀水道航路に入る前に海上保安庁長官に対して行う「航路通報」
イ 港則法に基づき、各港の管制水路に入航する前に港長に対して行う「事前通報」
をそれぞれ別に実施することが求められていました。
(今後)
新たな東京湾海上交通センターで湾内の船舶の動静等を一括して把握することができることから、通報手続きの簡素化として、上記アの「航路通報」を実施すれば、イの「事前通報」を要さないととし、運航者の利便性を向上させることとしました。
ただし、「航路通報」を実施すれば「事前通報」を要さない船舶は、
- 浦賀水道航路通航後、他の港に寄港したり、錨泊したりせず、港則法の管制水路を航行しようとする船舶
- 港則法の管制水路通航後、他の港に寄港したり、錨泊したりせず、浦賀水道航路を通航しようとする船舶
(3)柔軟な管制計画の策定
(これまで)東京湾の浦賀水道航路、中ノ瀬航路における船舶の管制計画は東京湾海上交通センターが策定し、東京湾の各港の管制水路における船舶の管制計画はそれぞれの港長が策定していました。
(今後)
新たな東京湾海上交通センターでは、海上交通安全法の管制と港則法の管制の両方をおこなう体制となることから、船舶の東京湾への入域から目的の港への入港までの間の航路及び港での管制計画を一括して策定することにより、ロスの少ない、柔軟な運航が可能となり、さらには物流の効率化にも資することを期待しています。
(4)きめ細やかな安全情報の提供
(これまで)これまで東京湾海上交通センターは、浦賀水道航路に入る前に大型船舶等が実施する「航路通報」等により、東京湾内船舶における動静を把握していたところです。
また、長さ50m以上の船舶は、浦賀水道航路・中ノ瀬航路を含む東京湾内の一部海域のみにおいて、東京湾海上交通センターが提供する情報を聴取することとされていました。
(今後)
今般の法改正により、指定海域に入域する際の入域通報が義務化されることから、新たな東京湾海上交通センターでは、東京湾内を航行する船舶の動静を確実に把握することが可能となります。
また、東京湾における情報聴取義務海域を平時においても拡大したことから、船舶に対する情報提供については、付近を航行する船舶の動静などを踏まえたものを、これまで以上にきめ細やかに実施することが可能となり、安全かつ効率的な東京湾の航行環境を創出してまいります。