(1) 背景
船舶交通が著しくふくそうする東京湾等において津波などが発生した場合には、一斉に避難する船舶により湾内が非常に混雑し、危険な状態となることから、船舶を迅速かつ円滑に避難させる必要があります。
また、東京湾の船舶航行環境としては、平時における安全性の向上や国際競争力の強化のため、混雑緩和や安全かつ効率的な船舶の運航を実現することなどが求められています。
(2) 一元化に当たっての基本的な考え方
海上交通管制の一元化に当たっては、次の3つの項目について、対応を進めていくことが必要だと考えます。1. 施設整備:海上交通センターと4つの港内交通管制室を統合し、高性能なレーダー等を整備
2.法的権限の付与:海上交通安全法等の一部を改正し、船舶に対して移動等を命令することができる制度を創設
3.人材の育成:海上交通センターで勤務する運用管制官の育成体制を充実強化するため、海上保安学校に「管制課程」を新設
(3)施設などの整備
海上保安庁では、大規模な災害が発生した場合において、船舶への警報などの伝達、避難すべき海域などの情報を迅速かつ確実に行い、また平時においても船舶の安全な運航及び運航効率の向上を図るため、東京湾海上交通センターと4つの港内交通管制室を統合の上、これらにおいて実施していた業務を一元的に実施することとしました(東京湾における一元的な海上交通管制の構築)。
このような、海上交通センターと複数の港内交通管制室との統合は、日本初の施策となります。
新たな東京湾海上交通センターは神奈川県横浜市に所在する横浜第2合同庁舎に機能を集約し、東京湾内の船舶の動静等を一体的に把握するために必要となるレーダーや監視カメラ、AIS(船舶自動識別装置)の送受信器、管制官の業務を支援するシステム、高速・大容量の通信回線網、災害に強い信号所などの整備を進めており、平成30年1月に新たな体制で運用を開始することとなっています。
(4)法的権限の付与(海上交通安全法等の一部を改正する法律)
平成28年5月12日に成立した「海上交通安全法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第42号)についてご紹介いたします。改正の概要
今回の法改正では、一元的な管制の運用に併せて、非常災害時の海上交通機能を維持し、また船舶運航者の安全性及び利便性を向上させることなどを目的として、所要の制度を設けるものであり
- 非常災害発生時に、船舶を迅速かつ円滑に避難させるための移動命令
- 船舶の負担を軽減し、安全かつ効率的な船舶の運航を実現するための通報手続の簡素化
などの措置を講ずることとしました。
施行期日
他のふくそう海域への適用
伊勢湾、大阪湾においても、湾内の管制機能を一元的に実施できる体制、施設などが整備された場合には、非常災害発生時における命令などの法律事項を適用することとしています。
(5)人材の育成
海上交通センターで勤務する運用管制官の育成体制の強化を図るため、高い管制技能・英会話能力を持つ運用管制官を継続的に養成する「管制課程」を、平成30年4月に海上保安学校に新設することとしました。
詳しくはこちらを御覧ください。
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