漁船「新生丸」衝突・転覆海難事故を受けて(11年1月〜3月)
11年1月20日、漁場から銚子港向け航行中の漁船「新生丸」(総トン数19トン、6名乗組)と船名等不詳の船舶が、八丈島東方の公海上で衝突し、「新生丸」がまもなく転覆、新生丸の衛星EPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)から発射された遭難警報が衛星を介して1回のみ海上保安庁のMCC(業務管理センター)において受信された。海上保安庁では、巡視船及び航空機の発動を指示し捜索救助活動を開始したが、遭難警報は誤発射であり、新生丸と通話中である旨の情報がもたらされ、一旦発動を解除した。しかしながら、その後、依然として新生丸の安否が不明であることなどが判明したことから、本格的な捜索救助活動を再開したものの、結果的に海難への対応が遅れることとなった。
このような結果から、運輸省において「漁船『新生丸』海難事故問題対策調査検討会」が開催され、海難に関する情報入手時から捜索救助活動の実施に至るまでの一連の救難活動を、より迅速かつ的確に実施するための方策が総合的に検討され、3月26日に同検討会報告書として取りまとめられた。海上保安庁では、同報告書に基づき、海上保安庁が船舶との直接連絡又は航空機等による直接確認により誤発射か否かの判断を行うこと等、救難活動の改善策を講じ、GMDSS(海上における遭難及び安全に関する世界的な制度)体制下における捜索救助体制を強化することとした。
なお、本件では、当初「新生丸」の衝突相手船が不明であったが、「新生丸」から採取された塗膜等が類似していること等からパナマ船籍ケミカルタンカー「KAEDE(カエデ)」(総トン数13,539トン、20名乗組)を衝突相手船と特定した。
[写真] 漁船「新生丸」の状況
[写真] 漁船「新生丸」海難事故問題対策調査検討会 |