三管区の勤務の現場
横浜機動防除基地
防除措置官
Q. 入庁した動機やきっかけ
山梨県出身のため、海は身近なものではなく、年に1度家族で海に遊びに行く程度で、高校まで海上保安庁の組織自体知りませんでした。
進学した海洋学を学ぶ大学で、ライフセービングクラブに所属し、夏の海水浴場のパトロール活動やマリンレジャーを通して、海上保安庁の存在を知り、海の魅力にみせられ、せっかく海洋学を学んだのだから一生の仕事として海と関係のある職場を!と海上保安庁を意識するようになりました。
そのような中、社会人の先輩とライフセービングのトレーニングでオーストラリアを訪れた際、同国のライフセービングクラブのコーチとの他愛もない会話(私自身は片言ですが【笑】)の中で、「Nature is beautiful.Lost easy.」という言葉を受け、当時の自分にとって心に刺さる言葉として残りました。そこで、就職活動を行っていくに当たり「海を職場に出来ること」「海洋環境に関する仕事が出来ること」を中心に考えたところ、海上保安庁の中に、警察や消防にはない海上災害や海洋汚染に対応する機動防除隊という特殊部隊があることを知り、「自分がやりたい仕事はこれだ!」と思いました。
海上保安官になって、さらには"機動防除隊員"として仕事をすることを目標に掲げ、海上保安学校を受験しました。
Q. 大学校・学校での思い出
1年間は本当にあっという間でした。年齢の近い同期達との共同生活は、中学(野球部)、高校(陸上部)と運動部に所属していたことから、毎日が合宿のような感覚で、全く苦になることは無く、有意義な1年でした。
大学で海洋学(地質学)を学んでいたため、航海科職員として採用された自分にとって、航海士になるための学びは非常に新鮮であり、また海上保安業務(警備救難分野等)の講義も集中して取り組むことが出来ました。夏に海上保安学校の前面海域で行った遠泳訓練は、クラゲと格闘しながらの訓練でしたが、無事同じ分隊の仲間たちと完泳することができ、一番の思い出です。
Q. 現在の仕事のやりがいや魅力
機動防除隊は、海難等により海上に排出された油・有害液体物質・危険物等の防除措置や海上火災に対する消火及び延焼防止措置に関して、現場において的確に汚染状況を評価し、技術的な指導助言を行う事が主な業務で、全国どこへでも出動します。
平時は、事故対応に必要な研修・訓練を隊内で行うほか、全国の防災業務に関わる海上保安官に対しても研修・訓練指導を行っています。また、排出油防除協議会等での講習会の講師を務めるなど、一般の方に対しても油防除を中心とした海上防災に関する知識の普及にも努めています。また、近年は国際協力業務として海上防災に関する高度な知識と技術を活用し、諸外国の海上保安機関職員に対する支援や教育訓練なども行っています。
海難等出動した現場において、的確に被害状況調査を行い、応急的な現場対応が求められる地方自治体などの関係機関と協力し、事故対応の責任がある船舶所有者や施設の設置者を適切に指導のうえ、"One Team"になって対応することで、被害を最小限に抑え、早期に美しい海を取り戻すための仕事が出来たときに機動防除隊員としてのやりがいを感じます。
特に機動防除隊は対策本部のブレインとして黒子的な立ち振舞いをすることが多く、自分達の活動で円滑に現場対応を進めることが出来れば、なお存在意義を感じることができます。
また、早期に海洋汚染を収束させることで、島国である日本にとって生命線である海運物流やエネルギー産業への二次的被害を抑えることで、安定した経済活動に寄与するとともに、早期の海洋環境回復は、水産業を支えることに繋がるものと思います。
また、現在、事故現場における油漂流状況調査等において、海上保安庁で保有するドローンを積極的に活用しています。今後も、ドローンを使用した現場援助活動が出来ないか色々な角度で模索中であり、「0」から「1」を造り出すようなチャレンジをしていきたいと思います。
Q. 入庁して一番印象に残っていること
現場に配属されて1年半後に発生した東日本大震災において、千葉県市原市に所在するコスモ石油千葉製油所のLPGタンクが大爆発を起こした事案へ、当時、横浜保安部所属の双胴船という特殊な形をした消防船ひりゆうの航海士補として現場対応にあたったことです。
事案発生後、沿岸域の被害調査のため東京湾内の管轄海域をしょう戒中、川崎市扇島沖から約20キロメートル以上離れた同製油所LPGタンクの爆発により発生した巨大な火柱は、今でも鮮明に覚えています。
Q. 今後の目標
機動防除隊員として様々な現場に出動して経験を積み、基地を離れたとしても、各現場部署における海上保安業務のほか、自治体への出向などを希望し、防災についての知見を深め、最終的には、隊長としてもう一度基地に赴任し、より責任のある立場で業務にあたりたいと思っています。
Q. 今の職場の働きやすさ
基本的に3~5年の任期で異動となり、全国から様々な経験を有し、かつ当基地を希望している職員が配属されています。
休暇については、24時間365日、主任防除措置官4名、防除措置官12名の計16名で事案即応体制を確保していますが、通常の公休のほかに、年次休暇等についても前もって計画的に調整のうえ取得し、各自、心身のリフレッシュや家族との時間を大切にして過ごせています。
勤務時間は、平時は日勤の体制をとっており、夜間の事案対応にあっては、その日の当番の隊が出勤して対応に当たっています。
事案はいつ発生するか分からないので、平時は極力超過勤務をしないように担当業務を割り振り、研修資料の作成や海洋汚染事故等に対応する様々な資機材の取扱訓練等をしています。
当番日は基地最寄りの官舎で単身赴任生活をしていますが、公休日や年休を取得して自宅に帰ったときは、子供たちの習い事の送迎や宿題を見るなど、家族との時間を大切にし、充実した時間が過ごせるように心掛けています。
Q. 海上保安庁を希望する学生へのメッセージ
私は機動防除隊を目指し、海上保安庁に入庁しましたが、これまで船艇6年半、陸上(総務系部署、救難防災系部署)を5年経験しています。
当庁には船艇の運航(航海士、機関士、主計士、通信士)のほか、航空機 の運航(パイロット、整備士、通信士)、海洋情報業務(観測、情報提供)、海上交通業務(管制、灯台管理等)、警備救難業務(刑事、警備、救難、防災等)、経理補給業務、船舶管理業務(造修、維持管理等)、総務業務(人事、厚生、広報等)など、多岐に渡る業務があります(海上保安庁HP参照)。
現在、海上保安庁に入庁を希望されている皆さんも、自分の性格やスキル、やりがいにあった業務を見つけ、その道のスペシャリストとして活躍出来る場が必ずあると思います。
島国である日本の安全で安心した生活を維持していくために無くてはならない組織が海上保安庁です!!
是非、自分が選んだ仕事に誇りを持って、これからも進化を続ける海上保安庁で共に仕事をしましょう!!