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U 関係諸国との協力・連帯の推進 

 1 警備救難業務関係

 (1) アジア太平洋地域における捜索救助(SAR)体制の確立

 近年,IMO等において,国際的な捜索救助体制を確立するための努力が続けられている。
 「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(SAR条約)(60年6月我が国について発効,9年5月末現在締約国数56ヶ国)は,海上における遭難者を迅速かつ効果的に救助するため,沿岸国が自国の周辺海域において適切な海難救助業務を行えるよう国内制度を確立するとともに,関係国間で協力を行うことにより,究極的には,世界の海に空白のない捜索救助体制を作り上げることを目的とするものである。
 我が国は,同条約の勧告に基づき,船位通報制度を導入したほか,ヘリコプター搭載型巡視船の整備等国内的な捜索救助体制の充実を図る一方,隣接諸国とのSAR協定の締結等により国際的な協力体制の確立に務めている。
 今後ともSAR条約締約国の捜索救助機関との連携を深めていくこととともに,非締約国に対しても,SAR条約への締結促進の働きかけを行い,IMOの活動を支援するなど,世界的な捜索救助体制の確立に向けて国際的な協力を強力に推進しいていくこととしている。

  (ア) 隣接国とのSAR協定

 SAR条約は,締約国に対して,関係締約国及び隣接国との間で捜索救助区域の画定,捜索救助に関する協定等について合意をするよう要請している。こうした捜索救助に関する協定の締結等により,お互いの責任分担が明確になるとともに,捜索救助に関する協力が促進され,効率的な捜索救助が可能となる。
 このため,我が国は,米国との間で,61年12月に「日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の海上における捜索及び救助に関する協定」(日米SAR協定)を締結し,我が国が捜索救助活動の調整に関し必要な責任を負う捜索救助区域として,本邦から1200海里に及ぶ広大な海域を担当することとなった。さらに,元年1月海上保安庁と米国沿岸警備隊との間で,具体的な協力方法等について定めた「日本国海上保安庁とアメリカ合衆国沿岸警備隊との捜索及び救助に関する協力のための指針」を作成し,日米SAR協定の円滑な実施を図っている。
 旧ソ連との間では31年に締結された「海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間の協定」(日ソ海難救助協定)に基づき捜索救助に関する協力を行ってきたところであり,6年7月「海上における捜索及び救助に関する日本国海上保安庁とロシア連邦運輸省海運局国家海洋救助調整本部との間の協力のための指針」を作成し,両国間の協力の一層の促進に努めている。
 また,韓国との間では,2年5月,SAR条約の趣旨に沿った「日本国政府と大韓民国政府との間の海上における捜索及び救助並びに船舶の緊急避難に関する協定」(日韓SAR協定)が締結されているが,7年9月に韓国がSAR条約に加入したことを踏まえ,今後,捜索救助に関する両国間のより一層の協力を図ることとしている。
 さらに,9年5月には日本海を囲む日本,韓国及びロシア(中国はオブザーバーとして参加)による捜索救助・海洋汚染防除実務者会合が開催され,各国が連携した捜索救助活動について討議した。
 なお,中国との間においても,SAR協定を締結するため実務者による協議を行っている。

  (イ) 船位通報制度

 船位通報制度は,参加船舶から提供される航海計画や航行中の船舶の位置等の情報をコンピューターで管理し,船舶の動静を見守ることにより,海難発生時の迅速かつ的確な捜索救助活動を可能とする制度であり,SAR条約においてその導入が勧告されているものである。
 海上保安庁では,60年10月から,我が国の船位通報制度(Japanese Ship Reporting System:JASREP)の運用を開始し,9年3月までの延べ参加隻数は28万隻にも上っている。
 また,これらのシステムは対象海域が接している米国の船位通報制度(AMVER)とも連携しており,両システムに連続して加入を希望する船舶に対しては,海上保安庁と米国沿岸警備隊との間でデータ交換を行うとともに,気象通報とも連携し,気象通報を行っている船舶の希望により,同船の位置等が自動的に海上保安庁へ転送されている。
 さらに,海上保安庁の海岸局にGMDSS対応機器であるDSC,NBDP等を整備し,これらを使用した通報も可能としている。

  (2) アジア地域等における海上交通の安全の確保

 海上保安庁は,8年12月及び9年5月から6月にかけてロンドンにて開催されたIMO第67回及び第68回海上安全委員会に専門家を出席させ,各国から提案された分離通航方式に対し提言等を行った。
 特に,マラッカ・シンガポール海峡における安全の確保に関し,同海峡が日本をはじめ世界各国の船舶が頻繁に航行している国際海峡であることから,海上保安庁としても分離通航方式の設定や通航規則の制定等の検討を行い,IMOの航行安全対策に寄与している。
 さらに,(社)日本海難防止協会においてもシンガポール連絡事務所を通じ,マラッカ・シンガポール海峡をはじめとする東南アジア海域における航行安全対策等の調査・研究を行っており,海上保安庁としてもこれに協力しているところである。

  (3) 海上犯罪に対する地域協力

 薬物・銃器の取締りに当たっては,一国だけでは対応困難な状況となっていることから,諸外国取締関係機関との協力を積極的に推進しており,8年12月,東京において,ロシア国境警備庁との間で海上における薬物・銃器の不正取引の動向及び関連情報等に関する意見交換を目的とする日ロ海上警備当局間協議を実施した。
 また,集団密航の防止対策の強化等に当たっては,中国等の関係国に対し領事当局間協議等の機会をとらえ,効果的な防止策を講じるよう求める等,取締当局間の協力関係の構築に努めている。 

 2 水路業務関係

  (1) 海洋環境状況把握のための国際的な連携

 4年6月の「環境と開発に関する国際会議(地球サミット)」における各国の行動方針となる「アジェンダ21」を受け,5年2月ユネスコ・IOCが世界気象機関(WMO),UNEP,国際学術連合会議(ICSU)等との協力のもと,世界的な広がりで気候変動の評価,海象の長期的な予報等を行い提供する総合システムを21世紀のはじめの稼働を目標に構築しようとする世界海洋観測システム(GOOS)構想を提唱した。8年10月から西太平洋海域におけるGOOSとして,北東アジア地域の世界海洋観測システム(NEAR−GOOS)が運用されており,日本海洋データセンターは,同システムにより取得したデータを取得後30日以降に管理する機関として参画している。
 また,UNEPが推進しているNOWPAPの実施に資するため,9年7月,海洋汚染緊急時対応に関して開催された「海洋汚染に係る準備及び対応に関するNOWPAP第1回フォーラム会議」で,海上保安庁は,漂流予測の高度化及び沿岸海域環境保全情報について報告した。今後のNOWPAPの実施に際しては,モニタリング計画の策定,データベースの構築等について,技術及び知見の蓄積を生かし,積極的に対応していくこととしている。

  (2) 東アジア水路委員会

 東アジア水路委員会(EAHC)は,IHOの地域水路委員会のひとつであり,東アジア地域の水路業務に関する調査・開発等の情報の相互交換及び技術の発展に関する相互協力等を目的とし,日本,中国,韓国等の東アジア地域8箇国で構成されている。
 海上保安庁は,この委員会の常設事務局となっており,加盟各国の協調関係の推進に努めている。

 3 航路標識業務関係

 極東海域における広域電波航法システムの効果的,合理的な整備の推進及びその安定運用を図るため,日本,中国,韓国,ロシア各国の運用機関は,8年1月1日から,ロランC国際協力チェーン(ロシアを除く3箇国)の運用を開始した。
 各国の運用機関は,8年9月にモスクワにて会議を開催し,今後とも利用者への安定した業務提供を行っていくこと,極東における電波航法システムの安定運用のため相互協力を図りつつ努力していくこと,精度向上のための技術改革に取り組むこと等を決定した。

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