2 航海の安全確保のための情報提供 海上保安庁では航海の安全確保のために必要な水路図誌を刊行するとともに,水路図誌を最新のものに維持するための情報や船舶交通の安全に必要な情報等を提供するため,船舶交通安全通報及び海流通報を実施している。 (1) 水路図誌等の刊行 ア 海図 (ア) 航海用海図 航海の安全確保のために不可欠な航海用海図には,港泊図,海岸図,航海図,航洋図,電波航法用海図,総図及び航海用電子海図(注3)があり,8年度末現在,896版を刊行している。 航海計画の作成に必要な海流,潮流,漁具定置箇所,風向,風速,地磁気偏差等の情報を,海流図,潮流図,漁具定置箇所一覧図,パイロット・チャート,日本近海磁針偏差図等として刊行しているほか,航海中の船舶の位置記入等に供するため,大圏航法図,位置記入用図等を刊行している。 イ 水路書誌航海の安全のために必要な港湾,航路,海象及び気象の概要,航路標識の状況,潮汐・潮流の予報,天体の位置等の情報を水路誌,航路誌,灯台表,潮汐表,天測暦等として取りまとめ,8年度末現在,合計361版刊行している。8年度は,本州北西岸水路誌,灯台表第2巻等水路書誌17版を新改版した。9年度は, 北海道沿岸水路誌等水路書誌17版を新改版することとしている。 ウ 航空図航空機の飛行計画の作成,飛行中の針路及び位置の決定等に使用できるように航空施設, 航空目標及び航法上必要な諸事項を記載した航空図は,8年度末現在, 国際民間航空機関の基準による国際航空図12図を始め, これに準じた図式で我が国を北部,中部, 南西部の3地域に分けた航空路図3図及び国内航空図10図を刊行している。 (2) 船舶交通安全通報の提供船舶交通の安全のために必要な情報は,印刷物により,水路通報,管区水路通報として,また,無線通信等により日本航行警報,管区航行警報,部署航行警報,海上交通情報及び世界航行警報システムによる航行警報(NAVAREA XI航行警報及びNAVTEX航行警報)として提供している。 ア 水路通報 (ア) 水路通報とは,水路図誌を最新のものに維持するための情報並びに船舶交通の安全に必要な航路標識の変更,海上における工事・作業,自衛隊あるいは米軍等が実施する射爆撃訓練等に関する情報を,冊子として週1回発行しているものである。 (ア) 日本航行警報とは,北太平洋西部からペルシャ湾付近までを航行する日本船舶に対し,航海の安全のために緊急に通報を必要とする漂流物等の情報を,日本語によるモールス無線電信で定時(海底火山噴火等,特に緊急を要するものについては随時)に提供しているものである。 船舶交通の安全及び能率的な運航に必要な情報として,日本周辺海域における海流,海氷等の海況をとりまとめ,インターネット等により海流通報として提供している。 注3 航海用電子海図 電子技術の発達に伴い船舶の大型化・省力化が進み,航海計器が高度に電子化されているなか,海上保安庁では船舶のより安全で効率的な航行を援助することが求められてきた。このため,海上保安庁では,世界的に統一された基準による航海用電子海図を刊行することとし,6年度に東京湾至足摺岬の航海用電子海図(ENC)第1号を刊行した。以後,8年度には第4号目のENCとなる日本北部及宗谷海峡至塩屋埼を刊行したことで中小縮尺のENCにより日本沿岸の大部分をカバーした。9年度からはふくそう海域における,より大縮尺のENCを刊行していくこととしている。 |