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U 航海の安全確保のための海洋調査及び情報提供

 1  航海の安全確保のための海洋調査

 海上保安庁は,航海の安全確保のための海洋調査を実施しており,その成果をとりまとめ,水路図誌を刊行するとともに,船舶交通安全通報等として提供している。
 また,これら調査結果は,海難発生時の漂流予測,地震予知及び沿岸域における各種海洋開発の基礎資料等にも用いられている。

 (1) 港湾・沿岸・補正測量

 港湾の改変等による現況変化に対応し,沿岸域における航海の安全確保のため,海図の新刊,改版のための港湾,沿岸測量及び補正図刊行のための補正測量を実施している。
 8年度は,二見港等7港の港湾測量,若狭湾西部等6海域の沿岸測量及び神戸港等79港(137件)の補正測量を行った。9年度は高松港等13港の港湾測量等を行うこととしている。
 また,海図の改版及び補正を効率的に行うため,海上保安庁以外の機関が実施した測量の成果の活用を図っている。

 (2) 海洋測量

 外洋域を航行する船舶に利用される航海図を整備することを目的として,大型測量船により海洋測量を実施している。
 8年度は,釧路沖等の測量を行い,各海域の詳細な地形及び水深等を明らかにした。9年度は,留萌沖等の測量を行うこととしている。

 (3) 地磁気測量

 磁気コンパスを利用する船舶や航空機の安全を確保するためには,海図,航空図に正確な磁針偏差及び年差を記載する必要がある。
 このため,八丈水路観測所において,定常的に地磁気観測を行うとともに,航空機による日本周辺海域での磁気測量及び沿岸部の陸上測点における年差測定を5年ごとに2箇年に分けて実施している。

 (4) 港湾調査

 水路誌に港湾の現況を記載するため,8年度は,小樽港等124港の港湾調査を実施した。9年度は,神戸港等の港湾調査を実施することとしている。

 (5) 潮汐観測

 潮汐表の予報精度向上及び海図の基本水準面の決定のため,全国28箇所の験潮所において定常的に潮汐観測を実施している。
 このうち,伊豆諸島等の験潮所では,このリアルタイムデータを黒潮変動の把握等の海況監視にも活用している。

 (6) 潮流・海流観測

 海峡や内湾域は, 船舶交通がふくそうしていることに加え,強く複雑な潮流が発生するため,船の運航や工事の実施に当たっては,的確な潮流情報が不可欠である。また,外洋に面した沿岸域では,海流や外洋海況の影響を受けて複雑な流れが発生する。このため,これら潮流・沿岸流の観測・解析を行い,潮流図等で情報を提供する必要がある。
 このため, 8年度は,野付水道等22海域で,潮流・沿岸流について観測を実施した。9年度は,津軽海峡付近等20海域で観測を実施することとしている。
 さらに,海流通報に必要なデ−タを得るため,測量船,巡視船及び航空機により日本近海の海流・沿岸流・海面水温の観測を定期的に実施しているほか,人工衛星による漂流ブイの追跡観測及び赤外線画像解析並びに内外の関係調査機関とのデ−タ交換を実施し,海況変動の把握に努めている。

 (7) 星食、接食観測(注2)

 電波による測位システムが普及した今日でも,天体を利用した位置決定手法は必要である。この位置決定には,天測暦,天測略暦等の航海用諸暦が用いられ,これらは,我が国で最も詳しい暦である天体位置表に基づき刊行している。このような航海用諸暦の精度の維持に必要となる月の軌道を精密に決定するため,本庁並びに白浜(静岡県),下里(和歌山県)及び美星(岡山県)の各水路観測所で星食観測を定常的に実施している。8年度は,奄美大島等で接食観測を行った。9年度は,小牛田(宮城県)等で接食観測を行うこととしている。

 (8) 海氷・波浪観測

 北海道オホーツク海沿岸全域及び道東海域では,冬期,流氷が押し寄せ,船舶の航行,漁業等にとって大きな障害となっている。これら流氷による海難防止を図るため,毎年,巡視船・航空機等により,流氷の分布,動向等の観測を実施しているほか、流氷が存在する期間は,第一管区本部に流氷情報センターを設置し、情報の提供を行っている。また,外洋における波浪の海域別・季節別特性を解析し,船舶航行の安全に資するため,本州南方等において波浪観測を実施している。


注2 星食・接食
 星食は,地球から見て,恒星が月の運行によって月に隠される現象である。接食は,星食の見られる地域の限界線上の現象で,月縁の凹凸のために恒星が明滅する現象である。
 星食及び接食を観測・解析することにより,月の軌道を精密に決定し, 天体暦の精度の維持, 向上を図ることができる。

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