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第4章 海難の救助
T 海難の発生状況と救助状況

 1 海難の発生状況

 8年の要救助船舶は,1,858隻,149万 6,159総トンであった。これに伴う遭難者は 7,825人で,このうち死亡・行方不明者数は 213人であった。

 (1) 要救助船舶の状況

 前年に比べると,要救助船舶隻数は, 104隻増加している。年変動が大きい台風及び異常気象下の海難を除いた要救助船舶について見ると 1,754隻で,前年に比べ29隻増加した。
 8年の台風及び異常気象下の海難を除いた要救助船舶について見ると次のとおりである。
  用途別では,漁船が多く,次いでプレジャーボート等となっている。
 海難種類別では,衝突,次いで乗揚げ、機関故障の順となっている。
  距岸別では,12海里未満で発生した海難が91%と大半を占めており,特に3海里未満の海難については78%と依然として高い割合を占めている。
  原因別では,見張り不十分,操船不適切,船位不確認等といった運航の過誤によるものが54%と全体の半数以上を占め,機関取扱不良,火気可燃物取扱不良及び積載不良を加えた人為的要因によるものが全体の72%を占めている。

 (2) 死亡・行方不明者の状況

 8年の要救助船舶乗船者のうち死亡・行方不明者数は, 2.7%に当たる 213人であり,前年に比べ17人増加した。

<多数の死亡又は行方不明が発生した船舶>
8年2月18日 マルタ鉱石運搬船「SEA FAITH」が台湾沖で船首に亀裂が発生,沈
         没。(行方不明者19名)
8年6月15日 キプロス貨物船「ANNA SPIRATOU」が長崎県対馬沖で,ギリシア貨
         物船「POLYDEFKISP」と衝突,沈没。(行方不明者26名)
9年1月13日 漁船「第18長進丸」が済州島沖でパナマ貨物船「WEL- SUN」と衝突,
         沈没。(行方不明者10名)

 2 海難の救助状況

 (1) 要救助船舶の救助状況

 8年は,要救助船舶 1,858隻のうち自力入港の 253隻を除き 1,328隻が救助され,救助率(自力入港を除く要救助船舶隻数に対する救助された隻数の割合)は83%(7年は82%)であった。救助率を距岸別に見てみると港内及び距岸 100海里までが83%,距岸 100〜 500海里未満では73%,500 海里以遠では86%となっている。
 海上保安庁は巡視船艇延べ 2,382隻,航空機延べ 503機及び特殊救難隊延べ 174人を出動させ,要救助船舶 377隻を救助した。また,海上保安庁が救助した船舶以外の船舶についても,巡視船艇による捜索,救助手配等を行っており,直接救助した船舶と合わせると 1,259隻の要救助船舶(全体の68%(7年74%))に対して救助活動を行った。

  (2) 人命の救助状況

 8年は要救助船舶の乗船者 7,825人のうち,自力救助の乗船者 2,123人を除き, 5,489人が救助され,救助率(自力救助の乗船者を除く要救助船舶の乗船者に対する救助された人数の割合)は96%(7年97%)であった。
 海上保安庁は,要救助船舶の乗船者 1,706人を救助しており,さらに捜索,救助手配等を行ったものを合わせると, 5,850人(全体の75%(7年78%))に対して救助活動を行った。

 3 人身事故の発生状況

 (1) 船舶海難によらない乗船者の人身事故の発生状況

 8年の船舶からの海中転落者,船内における負傷・病気等海難によらない乗船者の事故者数は 847人で,このうち 315人が死亡・行方不明となっている(第2−4−8図参照)。死亡・行方不明者数を事故内容別に見ると海中転落が最も多く,次いで病気,自殺となっている。 また,海中転落者数の57%は漁船員で占められている。

 (2) 海浜事故等の発生状況

 8年の海浜事故等の事故者数は 1,601人で,このうち 997人が死亡・行方不明となっている(第2−4−9図表参照)。事故内容別に見ると海洋レジャーに係る事故者数が全体の47%を占め,その死亡率(事故者数に対する死亡・行方不明者の割合)は44%であった。

 4 人身事故の救助状況

 (1) 船舶海難によらない乗船者の人身事故の救助状況

 8年は,船舶海難によらない乗船者の事故者数 847人のうち自力救助の 253人を除き 279人が救助され,救助率(自力救助を除く事故者に対する救助された人の割合)は47%(7年49%)であった。
 海上保安庁は,巡視船艇延べ 963隻,航空機延べ 332機及び特殊救難隊員延べ83人を出動させ,事故者 154人を救助しており,さらに,捜索,救助手配等を行ったものを合わせると 441人(全体の52%)に対して救助活動を行った。

 (2) 海浜事故等の救助状況

 8年は,海浜事故等の事故者数 1,601人のうち自力救助の 116人を除き 488人が救助され,救助率は33%(7年32%)であった。
 海上保安庁は,巡視船艇延べ 788隻,航空機延べ 208機及び特殊救難隊員延べ59人を出動させ,事故者 103人を救助しており,さらに,捜索,救助手配等を行ったものを合わせると 804人(全体の50%)に対して救助活動を行った。

 5 ヘリコプターによるつり上げ救助状況

 8年の海上保安庁のヘリコプターによるつり上げ救助者数は,要救助船舶の乗船者65人,海上及び孤立した磯場等での人身事故者27人の合計92人であり,つり上げ救助を始めた31年から8年末までのつり上げ救助者数は 2,463人に達した。

 6 救急患者の輸送状況

 海上保安庁は,洋上の船舶,離島等において救急患者が発生した場合,必要に応じ巡視船艇,航空機による患者、医師及び医薬品等の緊急輸送を行っており,8年は救急患者 251人,医師72人の緊急輸送を行った。
 このほか,海上保安庁は,無線通信による船上の患者に対する応急措置法の伝達等の医療援助を行っている。

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