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V 海洋レジャーの事故防止及び健全な発展に資する対策の推進

 1 海洋レジャー関係者に対する安全指導等

 急速に国民一般に普及してきた海洋レジャーについては,愛好者自らが安全に対する認識を持ってレジャーを楽しむべきであるが,海難発生の現状から見る限り,海洋レジャーの事故の原因は,初歩的な知識・技能の不足等基本的遵守事項の欠如によるものが多く,海難防止思想の普及がまだ十分であるとは言えない状況にあり,事故防止のためには関係者個々の安全意識の高揚が必要である。
 このため,海上保安庁では,マリーナ等への訪問による安全指導に加え,海難防止強調運動を展開し,愛好者を対象に海難防止思想の普及,高揚を図っている。
 さらに,全国各地において小型船舶の安全に関するビデオ,スライド等の教材を活用した海難防止講習会及び海上安全教室,訓練等を開催し,安全に対する知識技能の向上等を図っている。
 また,海洋レジャー愛好者に対し,気象・海象の的確な把握や知識・技能に応じた活動についての事故防止指導等を常日頃から行っている。このうち,プレジャーボート,水上オートバイ及び遊漁船については,その種類毎に,事故防止のための遵守事項を取りまとめたパンフレットを作成し,8年においては約26,000隻のプレジャーボート等を対象に訪船指導等の際の安全指導に活用した。
 水上オートバイについては,パーソナルウォータークラフト(PW)安全協会と合同の海上安全パトロール等の連携を図り,事故に結びつくおそれのある危険な行為の防止に重点を置いた安全指導を行っている。
 遊漁船については,年末年始やゴールデンウィークにおけるー斉指導や(社) 全国遊漁船業協会,遊漁船業団体等が開催する海難防止講習会に海上保安官を派遣するなど,機会あるごとに関係者に対する安全指導を行っている。

 2 「ボート天国」の実施及び海上行事への協力

 海洋レジャーの安全を確保することにより,その健全な発展に資するための施策の一環として,ボート天国を63年より実施している。
 これは,小型舟艇等が遊走することの困難な都市部及びその近郊の港湾を中心として,港内に一般船舶の航行が少ない休日等の一定時間,一般船舶の航行や停泊を制限する海域を設け,小型ヨット,ボードセーリング,手漕ぎボート等への一時的な海域の開放を行い,気軽に海洋レジャーを楽しんでもらい,水上オートバイや小型ヨット等の体験乗船やレースなどを通じて,安全思想の普及及び高揚と技術・マナーの向上を図るもので,8年度は全国27か所で延べ49日開催され,約22万人,約 2,300隻が参加した。
 海上保安庁では,今後とも,港湾管理者,地元市町村等と協力して,ボート天国の定着を図ることとしている。
 また,海洋レジャー行事が安全かつ円滑に実施されるよう,これらの行事の相談窓口として63年7月各海上保安部署に海洋レジャー行事相談室を開設し,相談者が必要とする情報を提供するとともに指導・助言を行っており,9年3月末現在,全国の各海上保安部署等120箇所に設置されている。
 相談件数も開設当初の63年は,約1,400件であったものが8年では約7倍の約9,800件と大幅に増加しており,相談内容も,ボート天国等の行事開催に関すること,小型ヨット等のレースの実施等に伴う安全対策に関すること,気象・海象情報に関する問い合わせなど多岐にわたっており,その地域に合ったきめ細やかな情報の提供等を行っている。

 3 関係団体の充実強化

 (1) 小型船安全協会等

 プレジャーボート等の安全を確保するためには,愛好者自らがその安全意識を高めていく必要があるが,初心者をはじめとするすべての愛好者にまで幅広く安全意識を浸透させるためには,自主的に安全活動を行う民間の活動が不可欠である。また,より効果的に安全意識を高められるよう、愛好者の組織化を図っていくことが重要である。
 このような状況にかんがみ,海上保安庁では,プレジャーボート等に係る海難の未然防止,運航マナーの向上等を目的として地域の実情に応じた安全活動を展開する民間ボランティアへの支援や小型船安全協会等との連携を積極的に推進している。
 民間ボランティア活動家である海上安全指導員は,プレジャーボート等に対する安全指導等の安全教育活動等を行っており,8年には海上安全パトロール活動等を通じ約45,000隻のプレジャーボート等を対象に安全指導を行った。
 また,小型船安全協会等は,民間の自主的な活動の組織母体として,愛好者の海難防止に関する知識・技能等の向上を図るため,安全講習会及び実技講習会の開催等地域に密着した安全活動を展開している。

 (2) (財)日本海洋レジャー安全・振興協会

 余暇活動の一環として個人の責任で行われるという海洋レジャーの特性等をふまえた諸施策を推進することにより,我が国における海洋レジャーの健全な発展に寄与することを目的として,(財)日本海洋レジャー安全・振興協会が3年7月に設立された。
 同協会の行う安全・救助事業には,BAN,DANのほか,安全潜水管理者や各種海上安全指導員の養成及び認定登録,安全思想の普及啓蒙活動があり,海上保安庁では,特にこの安全・救助事業について積極的に支援し,海洋レジャーの安全を確保していくこととしている。
 プレジャーボート救助事業(Boat Assistance Network :略称BAN)とは,プレジャーボート等を対象に会員制度の下,会員艇が機関故障等で航行障害となった場合のえい航又は伴走,乗員が行方不明となった場合の捜索等の救助サービスを24時間体制で実施するものである。会員がこれらのサービスを受けた場合の費用は原則として無料であるが,非会員の場合の費用は自己負担となる。BAN事業は,4年7月から東京湾及び相模湾から伊豆諸島の神津島付近までの海域で運営してきたが,さらに,8年7月からは大阪湾及び播磨灘と紀伊水道北部の海域でも開始した。
 8月末現在,会員数は2,791艇であり,事業開始以来329隻に対して救助活動が行われている。
 レジャー・スキューバ・ダイビング事故に係る応急援助事業(Divers Alert Network of Japan :略称DAN JAPAN)では,会員制度の下,緊急に専門医による治療を必要とする潜水病等の疾病にかかったダイバーのために緊急ホットラインが24時間体制で対応しており,事故現場及び搬送途中における応急措置法のアドバイスや,潜水病患者の受け入れが可能な再圧治療施設を有する医療機関に関する情報を提供している。
  また,DAN JAPANでは,ダイビング後の耳の異常など緊急に病院に行く必要はないが,ダイバーが不安を感じる症状に対して医師の対応が容易に受けられるよう,スキューバ・ダイビングに理解のある医師のネットワーク(Divers Doctor Network :略称DDNET)づくりを進めている。
 さらに会員を被保険者として国内外を問わずレジャー・スキューバダイビング中に被る障害等に対する補償を周年担保する保険を整備する等,安全潜水に係る種々のサービスを提供している。
 8月末現在の会員数は 8,896名である。

 (3) 各種安全対策協議会

 スキューバ・ダイビングやボードセーリングの事故防止を図るため,これらの活動が活発な地域で,海洋レジャー愛好者,ダイビングショップ等のサービス提供者,医療機関,ホテル等の関係者で構成され,自主的な安全対策の普及・実施及び事故発生時における適正かつ迅速な救助体制の整備を目的とした,地区スキューバ・ダイビング安全対策協議会(9年8月末現在45団体)及び地区ボードセーリング安全対策協議会(9年8月末現在4団体)が設立されており,海上保安庁ではこれら協議会の活動を積極的に支援している。

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