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U 装備

 1 船艇・航空機

  (1) 船艇の現状

 海上保安庁は,極めて広範多岐にわたる業務を実施するため,8年度末現在,警備救難,水路及び灯台業務用の船艇 515隻,また,職員の教育訓練用艇3隻の合計518隻(140,889総トン)の各種船艇を保有している。

  ア 警備救難業務用船

 警備救難業務用船は,海上における治安の維持,海上交通の安全確保,海難の救助,海上災害の防止,海洋汚染の防止等に従事しており,巡視船119隻,巡視艇235隻,特殊警備救難艇77隻の合計431隻であり,このうち,大型巡視船は48隻配備している。
 9年度は前年度からの継続分として,大型巡視船3隻,中型巡視船2隻,消防船1隻,小型巡視艇9隻,放射能調査艇1隻を整備するほか,新規分として大型巡視船3隻,及び監視取締艇1隻を整備することとしている。

  イ 水路業務用船

 水路業務用船は,水路測量,大陸棚調査,海象観測,地震予知測量等に従事しており,大型・中型測量船5隻,小型測量船8隻の合計13隻を配備している。
 9年度は,前年度からの継続分として大型測量船1隻を整備することとしている。

  ウ 灯台業務用船 

 灯台業務用船は,航路標識の性能の測定,灯浮標の設置及び交換,灯浮標,灯標等の点検整備等に従事しており,航路標識測定船1隻,設標船4隻,灯台見回り船66隻の計71隻を配備している。

  (2) 航空機の現状

 航空機は,その優れた機動力と監視能力によって,海上における治安の維持,海上交通の安全確保,海難の救助,海上災害の防止,海洋汚染の防止等に従事しており,8年度末現在,飛行機26機,ヘリコプター44機の合計70機の航空機を全国14の航空基地及び9の海上保安部に配属している。
 9年度には,前年度からの継続分として中型飛行機4機及び中型ヘリコプター4機を整備するとともに,新規分として中型飛行機3機を整備することとしている。

  (3) 船艇・航空機の整備

 国連海洋法条約の締結に際しての接続水域及び排他的経済水域の設定による監視取締り水域の拡大に加え,近年は,不法入国事犯の増加,薬物及びけん銃の密輸入問題の深刻化等により,海上保安業務に対するニーズも急速に多種多様化,複雑化してきており,これらのニーズに的確に対応するために巡視船艇・航空機の整備が緊急の課題となっている。
 一方,巡視船艇・航空機の中には,既に耐用年数等を迎え,老朽化等による性能劣化の著しいものが目立ってきており,これら巡視船艇・航空機を早急に代替整備する必要がある。
 このため,近代的装備を有する高性能な巡視船艇・航空機の整備を実施するなど,業務執行体制のより一層の強化を図ることとしている。
 巡視船艇については,
  ヘリコプター搭載型巡視船による距岸100海里以遠でのSAR体制等の強化(200
  海里までは12時間,それ以遠は24時間で事案に即応する体制の確立)
  距岸100海里内での大型巡視船と航空機との連携機能強化(6時間で事案に即
  応する体制の確立)
  高速中・小型巡視船による沿岸での即応体制の強化(3時間で事案に即応する
  体制の確立)
  根室,津軽,対馬海峡における監視取締り体制の強化
  高速小型巡視船による日本海及び九州南方海域の領海警備体制の強化
  中・小型巡視船及び大型巡視艇による東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海内のふくそ
  うする海域における即応体制の強化(1時間で事案に即応する体制の確立)
  航路しょう戒艇(大・小型巡視艇)による海上交通安全法に定める航路等のしょう
  戒体制の強化
  小型巡視艇による港及び周辺海域の体制強化
等を,また,航空機については,
  ジェット飛行機によるSAR体制等の強化
  大型・中型ヘリコプターによる空白のない直接救難圏の確立(距岸約100海里内
  の海域において,内海内湾等は1時間,それ以外の海域は2時間で事案に即応
  する体制の確立)
  中型飛行機による沿岸しょう戒体制等の強化
  夜間悪天候下でも出動可能な機体の導入,2機4クルー体制の整備等による周
  年24時間出動体制の確立及び特殊救難隊等の輸送能力の強化
等をめざして体制を構築していくこととしている。
 また,測量船については,近年,沿岸域の総合的な利用・開発の気運の高まりに伴う精密な調査の必要な海域の拡大,海洋レジャー活動の進展等新たな沿岸海域の利用による海洋情報のニーズの増大,地震・火山噴火予知や地球規模での環境問題に関するきめ細かな調査の要望等,調査の質的・量的な強化が必要となっている。
 このため,最新の観測機器を装備し,調査海域・目的に適合したものに順次整備を図るよう努め,9年度においては,管轄海域確定のための大陸棚調査,防災のための地震・火山噴火予知調査,地球環境把握のための海象観測・海洋汚染調査等のため,大型測量船1隻を就役させ多種多様な海洋情報ニーズに対応していくこととしている。
 さらに,灯台業務用船については,航路標識基数の増加等に対応するため,耐用年数到来時に高速化を図るなど必要な機能を強化したものへの代替整備を行い,多様な航路標識業務に対応していくこととしている。

 2 通信

 海上保安庁は,我が国周辺海域を航行する船舶との間で,海難,航行警報,海上気象予報・警報,船位通報,入出港・検疫,巨大船との航路通報に関する通信等の様々な通信を実施しているほか,部内相互間における指揮,命令,報告等の伝達等を行う通信を実施している。
 かつては,このような海上保安に関する通信施設を,管区本部,保安部等に設置していたが,都市雑音の増大などの問題によりこれらの施設の機能の著しい低下が問題となってきた。
 このため,昭和47年度を初年度として,順次,統合再編成を行っており,日本海東部地区の整備を終え,9年1月に11地区の統合再編成を完了した。
 また,「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度」(GMDSS)に適切に対応していくため,COSPAS/SARSATシステムの地上設備,NAVTEX送信局,中波及び短波海岸局及び日本語NAVTEX送信局を整備し,運用している。
 さらに,ますます増大する業務ニーズや,昨今の情報化の流れ等に対応するため,主たる通信回線を高品質で信頼性の高いディジタル回線への移行等の整備を実施している。

 3 行政情報化の推進

 6年12月に「行政情報化推進計画」が閣議決定されたことを踏まえ,海上保安庁でも,情報通信技術の急速な進展に対応して,海上保安行政に関する情報基盤の整備を通じ,国民サービスの向上及び行政事務の効率化を図るため,行政の情報化を総合的な観点から推進しているところである。
 9年度は,クライアント(パソコン)の設置,本省,インターネットとの接続を行うこととしている。

 4 海洋情報システム

 60年10月から運用を開始した海洋情報システムは,本庁の情報処理装置と,管区海上保安本部を経由してオンラインで接続された全国の海上保安(監)部,特定港を有する海上保安署,航空基地,統制通信事務所等の入出力端末機で構成され,24時間体制でリアルタイムの情報提供・処理をしているコンピューターシステムである。
 このシステムは,事件・事案に的確に対処するために,巡視船艇・航空機の動静に関する情報,JASREPによって得られる船舶の位置等に関する情報のほか,外国漁船・外国海洋調査船等の動静に関する情報,航行船舶の安全に関する情報,過去に発生した海難の情報等についても集中管理し,海上保安業務の効率化を図っている。
 9年10月には,業務ニーズの増大に対応して,本庁の情報処理装置の能力強化やオンライン回線のLAN化を行うこととしており,今後とも,海洋情報システムを迅速・的確な対応が要求される警備救難業務を中心に,海上保安業務全般の一層の効率化に役立てるよう検討を図っていくこととしている。

 5 留置施設

 海上保安庁は,管区海上保安本部,海上保安(監)部,海上警備救難部及び海上保安署並びに巡視船に計123箇所の留置施設を設置している。
 近年の人権擁護意識の高まりにこたえ,海上保安庁の留置施設の適正な管理運営を図り,被留置者の人権を尊重しつつ,その適正な処遇を確保する必要があるため,「海上保安庁の留置施設に関する法律案」を過去2回国会に提出したが,廃案となった。しかしながら,この法律案は,「刑事施設法案」及び「留置施設法案」の立法趣旨と同様に,海上保安庁の留置施設に留置される者の適正な処遇の保障等を目的としていることから,その早期成立に向けて,関係省庁と共同歩調をとりつつ,対応していくこととしている。
 さらに,被留置者の人権保護,処遇の向上等を図るためには,留置施設自体の構造,設備といった面からの改善も必要不可欠であることから,留置施設内のトイレの改善やシャワー室の設置等施設の改善を図っている。

 6 庁舎等の整備

 海上保安業務遂行のための組織及び正面装備がその機能を十分に発揮するためには,後方支援体制を正面装備と一体として整備しなければならない。しかしながら,海上保安庁の庁舎等の現状を見ると,いまだ借上庁舎や老朽・狭あいな木造宿舎が多数散在するなど,執務及び生活環境の整備が不十分であり,また,船艇・航空基地等の業務用施設においては,老朽化や機能上業務ニーズとのかい離が見られ,これら施設の修繕,更新に関する需要は飛躍的に増大している。
 また,海上保安業務の複雑,多様化に伴い,事務処理の効率化及び質的向上を図る必要が生じてきており,船艇職員執務室,武道場等の早期整備が求められている。
 そのうえ,空港整備計画に伴う航空基地施設の移転整備,港湾整備計画に伴う船艇基地施設の整備,巡視船艇・航空機の大型化等に伴う船艇・航空基地施設の整備,更には,教育機関の老朽・狭あい施設の整備等新規需要も確実に増えている。
 このため,海上保安庁では,質・機能の充実した施設の整備,既存施設の修繕,老朽・狭あい施設の解消,執務及び生活環境の改善等の後方支援体制の整備を実施していくこととしている。

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