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第4章 その他の防災対策
 1 有害液体物質等の防除対策

 有害液体物質等は,その種類も多く,性状及び取扱いも多岐にわたることから,これらを輸送する船舶の海難等により排出事故が発生した場合には,それぞれの物質に応じた適切な防除措置を講ずる必要がある。
 海上保安庁では,船舶所有者に対し排出事故等が発生した場合の通報を指導しているほか,海上災害防止センターに対し,防除技術に関する調査研究,船舶所有者等から委託を受けて行う防除措置の実施体制の整備を指導している。

 2 海上消防対策

 8年には,船舶火災は134件発生し,この船舶火災を船種別に見ると,漁船が87件と依然として多く,全体の65%を占めている。
これらの事故件数の推移を見ると,近年,130件前後の発生件数で横這い状態である。
 海上保安庁は,全国各地の海上保安部署に消防船艇をはじめ,消防能力を有する巡視船艇を配備し,消火や延焼の防止のための措置等を講じている。
 さらに,原油,LPG,LNG等の危険物を積載した大型タンカーが海上交通安全法に定める航路を航行する場合には,所要の消防能力を有する船舶を配備するよう指示しているほか,荷役中の場合にも一定の消防能力を確保するよう指導し,海上消防体制の確保を図っている。
 また,消防機関との間では,事故情報の相互通報,責任範囲等を内容とする船舶火災に関する業務協定を締結しており,相互の協力により消火活動を的確に実施することとしている。なお,臨海部の火災についての消防機関の要請についても,積極的に対応することとしている。

 3 大型タンカーバースの防災対策

 載貨重量トン数50,000トン以上の油タンカー用バース及び総トン数25,000トン以上の液化ガスタンカー用バースについては,バース管理者等に対し,荷役時の事前打ち合わせの励行,防災用資機材の整備,警戒船の配備等を指導している。
 また,載貨重量トン数100,000トン以上の油タンカー用バース及び25,000総トン以上の液化ガスタンカー用バースの建造に際しては,海上における安全防災上の見地から,防災資機材等の配備計画,離着桟時の安全対策等について,指導を行っている。
 なお,8年は,8月30日から9月5日までの防災週間において,大型タンカーバース155箇所の一斉点検を行い,荷役安全管理体制等について,調査するとともに,安全防災対策に関する指導徹底を図った。

 4 国家石油備蓄基地の防災対策

 国家石油備蓄基地には,陸上タンク方式等による陸上備蓄(4基地),地中タンク方式による地中タンク備蓄(1基地),洋上タンク方式による洋上備蓄(2基地)及び地下岩盤タンク方式による地下備蓄(3基地)の4種類があり,10基地が操業中である。
 海上保安庁では,これらの備蓄基地の計画段階から,各備蓄方式の特殊性に応じた海上防災体制の整備強化について指導を行ってきており,むつ小川原基地等4基地,上五島基地及び白島基地の2基地,志布志基地及び串木野基地の2基地において,それぞれ共同で海上防災に必要な資機材等を配備・運用する広域共同防災体制が整備されている。

 5 海上災害防止センターの指導・監督

 海上災害防止センターは,運輸大臣の認可を受け,51年に設立された海上防災の実施に関する民間の中核機関であり,排出油等防除措置(注)のほか,次の業務を行っている。
 ア 機材業務
 海上防災に必要な資機材(油回収船,オイルフェンス,油処理剤,油吸着材等)の保有,船舶所有者その他の者の利用に供する業務。
 イ 海上防災訓練業務
 タンカーに乗り組む上級船舶職員,石油関連施設の従業員等に対する消防実習,油防除実習などの各種研修訓練の実施業務(8年度末現在約40,500人参加)。
 ウ 調査研究業務
 大規模油流出事故への対応のための防除技術など,海上防災に関する技術についての調査研究業務。
 エ 情報提供業務
 海上防災措置に関する情報の収集,整理及び提供業務。
 オ 指導助言業務及び国際協力推進業務
 海上防災に関する指導・助言業務及び海上防災措置に関する国際協力の推進に資する業務。
 その他,東京湾におけるタンカー等の火災警戒業務,国家石油備蓄基地の海上防災体制整備に関する業務等を行っている。
 特に,調査研究業務については,8年に,従来の油処理剤では処理が困難であった高粘度油に対して有効な油処理剤(高粘度油対応型)を開発したところである。
 海上保安庁では,同センターの業務が円滑に実施されるよう指導・監督を行っており,官民一体となった海上防災体制の確立を図っている。


注 排出油等防除措置
 8年度末現在,全国の84港湾で143防災事業者等と防災措置実施に関する契約を締結し,設立以来これまでに119件実施している。


 6 国際協力の推進

 我が国が,7年に締結したOPRC条約を踏え,国際協力の推進に関し,海上保安庁でも積極的に対応することとしている。
 @ 国際的な連携の確保
 近隣諸国等との海洋汚染に関する地域協力体制については,国連環境計画(UNEP)が,日本,中国,韓国及びロシア等を対象としたNOWPAPを推進している。
 海上保安庁は,NOWPAPの事業項目の一つである「海洋汚染緊急時の対応」に関して,7月に富山市で開催された第1回フォーラムへの参加等,NOWPAP諸国の連携強化や地域協力体制の構築に向け,引き続き積極的に対応することとしている。
 A 関係諸国との国間協力
 米国との間においては,2年のOPRC条約採択を契機として,米国沿岸警備隊(USCG)との協力関係を推進しているところであるが,9年5月に「日米コモン・アジェンダー地球的展望に立った協力のための共通課題」の一分野として油流出対応に関する日米協力が正式に位置づけられたことから,今後,油流出事故への対応における協力を一層推進していくこととしている。
 韓国とは,9年7月に第4回日韓海洋汚染防除専門家会議を開催し,日韓の油防除体制の現状等について情報及び意見の交換,油流出時の日韓の共同対処方策の検討を行った。今後,共同対処方策の策定に取り組むこととしている。
 ロシアとは,9年7月に第2回日ロ海洋汚染防除専門家会議を開催し,日ロの油防除体制の現状等について情報及び意見の交換を行うとともに,今後の協力関係の推進を確認した。
 B 技術協力の推進
 東南アジアをはじめとする開発途上国における油防除技術者の育成を図るため,海上保安庁では,57年度から,国際協力事業団の集団研修救難防災コースを実施しているほか,国際協力事業団を通じ,8年8月,インドネシアの防災業務に携わる政府職員に対する研修のため,流出油防除技術分野の専門家を同国に派遣した。

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