序章 平成の10年間を振り返って
 時代が昭和から平成に変わり、10年間が過ぎようとしている。今年で50周年を迎えた海上保安庁にとっても、また、我が国にとっても、この10年間は激動の時代であったと言える。平成における主要な海上保安業務については、テーマごとに次章以下で述べているが、特徴的な事項としては、国連海洋法条約の締結に際して接続水域、排他的経済水域の設定等による監視取締り水域の拡大への対応、外国船舶の増加や特定海域での船舶交通のふくそう等に応じた海難防止対策の強化、遭難・安全通信システムの「海上における遭難及び安全に関する世界的な制度」(Global Maritime Distress and Safety System:GMDSS)への移行や「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(SAR条約)に基づく国際捜索救助体制の確立、ナホトカ号海難・流出油災害等を踏まえた油防除体制の充実強化などが挙げられる。
 特に最近では、中国・韓国からの集団密航や薬物・銃器密輸等の外国人犯罪対策や海難事故が続く外国船舶の安全対策が重要な課題となっている。
 海上保安庁においては、このような業務の質的・量的変化に対応して高性能化した巡視船艇・航空機の整備をはじめとする海上保安業務執行体制の強化に努めつつ、その適切な実施に取り組んできたが、設50年を機に、海上の安全確保という使命を改めて認識し、来る21世紀に向けて様々な課題に全力を挙げて対処することとしている。