第6章 自然災害への対応

 1 自然災害対策

 海上保安庁では、災害の発生等に備えて、24時間の当直体制をとり、全国に巡視船艇・航空機を配備する等災害応急体制を確保するとともに、横浜海上防災基地の整備等防災拠点の整備を実施している。
 また、災害が発生したときの職員の呼集、情報の伝達、海難救助、消防、排出油の防除等に関する訓練を地方公共団体や関係機関と合同で、地域の特性に応じて実施している。特に9月1日の「防災の日」を中心に、国が実施する総合防災訓練の一環として対策本部設置運営、情報伝達、巡視船艇・航空機動員手続き等の訓練を実施するとともに、東京湾、相模湾、駿河湾、伊勢湾において、地方公共団体や関係機関等と連携して、情報伝達、人命救助、排出油の防除、船舶火災の消火等船艇・航空機を用いた実働の防災訓練を行い、相互の連携を深めている。
 さらに、地震、津波等の自然災害が発生した場合における海上からの救難・救助活動を迅速かつ適切に実施するために必要な情報を、一枚の図に網羅した「沿岸防災情報図」を整備し、防災関係機関に配付している。10年度は関東、紀伊水道西方、鹿児島地区及び北海道地区について調査することとしている。
 今後においても引続き、自然災害発生の蓋然性の高い地域について、同図の整備を進めていくこととしている。

 2 防災のための調査

  (1) 地震に関する調査研究
 文部省測地学審議会において、39年に地震予知研究計画が建議され、現在は5年になされた建議等に基づき、第7次地震予知計画(6〜10年度)等が進められており、関係機関は、地震予知に関する調査、研究を行っている。
 海上保安庁では、当初の地震予知研究計画から参加し、水路業務で培った高度な海底測量技術等を活用して、次のような地震予知に関する調査研究を行っている。
 ・活断層の分布や性質を明らかにするため、特定観測地域の周辺海域やプレート境界域において、海底地形・活断層調査等を実施(第2―6―1図参照)。

第2―6―1図 釧路東方海域鳥瞰図

  • 地盤の上下変動をとらえるため、全国28箇所の験潮所において、験潮データを常時監視できる、テレメータによる潮位の集中監視を実施。
  • 地磁気の変化から地殻の歪みの変化を把握するため、伊豆諸島において、地磁気・地電流観測を実施。
  • 海域の地殻変動を明らかにするため、ディファレンシャルGPS等を利用した地殻変動監視観測並びに伊豆諸島の一部における重力計による重力測定を実施。
  • 地震発生に関する長期的予測に資するため、比較的人口密集度の高い、又は活動度の高い断層が存在すると想定される沿岸海域において、活断層の分布等の調査を実施。
  • 地殻の歪みを発生させる原動力であるプレート運動を把握するため、石垣島ほか3箇所において年1箇所ずつ、人工衛星レーザー測距観測を実施。

 なお、地震防災対策特別措置法に基づき、総理府に設置された地震調査研究推進本部においては、昨年8月に「地震に関する基盤的調査観測計画」を決定し、沿岸域における活断層調査、海域における地形・活断層調査を、当面推進すべき基盤的調査観測等の一つとして位置づけている。
 これらの成果は、地震調査研究推進本部地震調査委員会等に報告され、海域における断層の分布、性質、地殻の歪量等といった地震発生のメカニズム解明のための基礎資料にされているほか、「海底地形図」、「海底地質構造図」、「地磁気全磁力図」、「重力異常図」として刊行している。
  (2) 火山噴火予知計画への参加
 測地学審議会において、48年に火山噴火予知計画が建議され、現在は5年になされた建議に基づき、第5次計画(6〜10年度)が進められている。
 海上保安庁では、火山噴火予知計画に当初より参加しており、航空機による南方諸島及び南西諸島海域の火山活動観測、海底火山の地下構造解明のための航空磁気測量を行っているほか、無人調査が可能な「マンボウU」等による海底の地形調査等により、海底火山に関する基礎資料を整備することとしている。
 さらに、航空機及び人工衛星から取得したデータの解析を行っている。